【乱流変流】(上)「反麻生」うねり一気 権力争い拒否感あらわ 福岡知事選

西日本新聞

 7日投開票された福岡県知事選。民意は三たび小川洋氏(69)を県政のリーダーに選んだ。異例の自民党分裂選挙で小川氏を大勝に導いたのは、関係が悪化した小川氏への対抗馬擁立に突き進んだ麻生太郎副総理兼財務相と、それに追随した党県連に対する有権者らの拒否感だった。

 「これまでと異なり、手作り、手探りの選挙戦となった。県民の勝利と言っても過言ではない」

 午後8時1分、当選確実の報に沸き上がる福岡市の報告会場に姿を現した小川氏。日焼けした顔を紅潮させ、与野党相乗り支援を受けた過去2回と異なり、自民推薦候補との対決となった選挙戦を振り返った。

 無数のカメラのフラッシュを浴びながら壇上で万歳を繰り返す小川氏の横で、自民の武田良太衆院議員ら「反麻生」派の議員らは満面の笑み。「県民の総力が素晴らしい結果を生んだ」と沸き立った。小川氏は一人一人とがっちり握手を交わし、勝利の喜びをかみしめた。

 麻生氏との関係悪化により、小川氏は自民に対抗馬をぶつけられた。党推薦は「自分に出るか、最悪でも双方に出ない」と踏んでいた小川氏は、県議会関係者との会食中に武内和久氏に推薦が決まったことを知らされ「え、なんで」と腰を浮かせて驚いたという。

 だが、自民推薦を取れなかったことが、逆に小川氏の「強み」となった。

 麻生氏の「私怨(しえん)」により、知事の座を追われそうになっている-。小川氏に付いたイメージは、有権者の判官びいきを刺激した。小川氏は政党への推薦願をすべて取り下げ「県民党」の立場を強調したことで、「権力者対県民」の構図を作り出すことに成功。民意は雪崩を打った。

 告示日、北九州市小倉北区での演説後、「応援してるよ」「絶対に負けるな」と握手攻めにあった。「過去2回と反応がまったく違う」。小川氏は驚きを隠さなかった。

 県議、市議らが主催する演説会や支援者を紹介して歩く「引き回し」はわずかだったが、小川氏と良好な関係を続けてきた県医師連盟や県農政連、母校修猷館高の有志らが手弁当で手伝った。「雪だるまを押してくれる手がどんどん増えていって、今ではすごく大きな球を転がせるようになった」。選挙戦中盤、小川氏は手応えをこう表現した。

 自己最多の約129万票を獲得し、圧勝した小川氏。だが、「戦後」の道のりは平たんではない。

 小川氏の陣営を主導した「反麻生」派は、小川氏の勝利で主戦論を強める。山崎拓元自民党副総裁は「自民県連の判断は間違っていた。小川氏が自民県議団と手を組めば、県民の圧倒的な負託を裏切ることになる」。武田氏は「今回の結果は重い。政治はやはり結果責任だ」と述べ、県連執行部の一新を求めた。

 県議会最大会派である自民と小川氏の間に横たわる深い溝。記者団から関係修復にどう取り組むかを問われた小川氏は笑顔から一転、険しい表情に変わり、慎重に言葉を選んだ。「ノーサイドという言葉は使わない。県民の幸せを上げるという共通目標のために、これからも協力したい」

=2019/04/08付 西日本新聞朝刊=

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