私の最期 ゲームで考える 余命半年想定、優先したいもの選択 「どう生き抜くか」も前向きに

西日本新聞 医療面

 縁起でもない話を元気なうちに、みんなで、おしゃべり感覚で-。終末期の治療方針について患者と家族、医療・介護従事者が話し合って決める「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の重要性を国が打ち出す中、自身の最期について考える一つのきっかけになるのがカードを使った「もしバナゲーム」だ。縁起でもない話とは「治療困難な病気で余命半年を宣告されたら、何を大切にして生きたいか」。ゲームを通じ、自分と向き合ってみた。

 福岡市・天神で3月下旬にあった在宅ホスピスフェスタ2019「逝き方から生き方を学ぶ-今 知っておこう在宅ホスピス」。基調講演した在宅ケア移行支援研究所(京都市)の宇都宮宏子さん(60)は強調した。「どこで最期を迎え、どんな暮らし方がいいか、大切な人と話しておこうということ。話していないと、患者さんがしゃべれなくなってから、家族は迷う。代理決定はつらいんです」

 ただ、自分が望む最期の形を言葉にしようと思ってもなかなか難しい。そんなとき「もしものための話し合い」略して「もしバナ」ゲームが助けになる。亀田総合病院(千葉県鴨川市)で在宅医療などに携わる医師たちが米国版カードを翻訳した。

 講演後にあった体験会。教えてくれるのは、糸島医師会(福岡県)のソーシャルワーカーで普及を図る“もしバナマイスター”の小畑麻乙(まお)さん(39)たち。参加者は初対面の4人一組に。私は、大学教員のまみさん(51)、いずれも看護師のゆのきさん(52)、チョコさん(56)と一緒だ。

 まみさんが35枚のカードを切り、1人5枚ずつ他の人に見えないように配った。カードには終末期にまつわる医療や家族との関係、過ごし方などが書かれている。私の手札は「尊厳が保たれる」「私を一人の人間として理解してくれる医師がいる」など。

 残ったカードから5枚を中央に置き、4人それぞれが手札の中から1枚を捨てて、価値観に合った新しい1枚を選ぶ。自分にとって「ありか、なしか」を基準にすればいいので選びやすい。初対面同士だからか、選んだ理由も気負いなく話すことができた。

 ゆのきさんは「自分が何を望むのか家族と確認することで口論を避ける」を捨てて「機器につながれていない」を選んだ。「自分の意思を通させてもらいたいし、何もかんも機器は外してほしい」そうだ。

 私は「自分の人生を振り返る」((1))を選んだ。これまで生きてきた34年、実現したいのに後回しにしていたことがたくさんある。人生を振り返った上で「やりたいこと」「会いたい人」「訪れたい場所」などをまず整理したいと思った。

 中央の5枚のカードを変えながら、この作業を数回繰り返す。私は「家で最期を迎える」も捨てて「意識がはっきりしている」((2))を選んだ。家族など大切な人と一緒なら場所はどこでもいい。それよりも、最期の一瞬まで楽しさやうれしさを感じていたい。

 ゲームの最後、手元に残った5枚のうち、最も大切にしたい3枚を選ぶ。私は(1)(2)と「大切な人とお別れをする」を選んだ。心に浮かんだ人たち全員に会うことが、優先的にやりたいことのような気がした。

 一方、まみさんの3枚は「誰かの役に立つ」「ユーモアを持ち続ける」「親友が近くにいる」。「誰かの役に立つのが今生きている目的の一つ。最後の最後までそうありたい」と言う。まみさんと比べて、私は自分本位のカードばかりだったが、まみさんは「私も若いときだったらそうなると思いますよ」。

 確かに10年後、20年後にゲームをすると変わっているかもしれない。「あした気持ちが変わっても全然構わない。きょうの考えを記録として残すことが大事」と小畑さん。縁起でもない話をしている会場からは笑い声も。「死に方」ではなく「生き抜き方」を前向きに考えられた、不思議で有意義な時間だった。

=2019/04/01付 西日本新聞朝刊=

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