田川市の課題(上)駅でICカード使えない 「今に取り残される」

西日本新聞

 田川市の玄関口、JRの駅。北九州市からJRを乗り継ぎ県立大に通学する3年生の女性(20)が田川伊田駅でよく目にする光景がある。関西方面からのビジネス客だろうか。大きなバッグを持った人が改札口で駅員に苦情を言っている。「同じJRやろ。何でや」。後ろは列ができる。

 田川市に乗り入れる日田彦山線、後藤寺線の駅ではICカードが使えない。小倉や博多、飯塚方面などからICカードで乗った客は、降りる際に現金で精算しなければならない。乗車記録は残ったままなので、ICカードが使える駅まで行って取り消さないと、そのカードで次にJRは利用できない。女性は2年前、初めて乗った時、「県内で使えない所があるのか」と驚いたという。

 田川伊田駅によると、苦情は1日2、3件、多い日は10件ほどあるという。

 買い物もカードで済ます人が増えた。中国や韓国は日本よりカード決済が進んでいる。田川広域観光協会DMO推進アドバイザーでインバウンド担当の江藤英雄さんによると、九州を訪れる個人の観光客の多くはICカードを購入し、列車やバスで移動する。

 田川市は、来年の東京パラリンピックでドイツの車いすフェンシングチームの事前キャンプ地になる。市は海外にPRする絶好の機会と捉えるが、江藤さんは「一度、不便な所だと感じた客はリピーターにならない」と危惧する。

 駅でICカードが使えない問題は、目の不自由な人にとってはより深刻だ。緑内障で6年前に運転免許証を返納した田川市位登の農業伊藤龍文さん(74)は、好きなクラシック音楽を聴くためによく福岡市に行く。バスや地下鉄もICカードが1枚あれば乗れるが、最寄りの田川後藤寺駅では使えない。料金表が読めない。「私のように困っている人は多い。このままでは田川は取り残される」と感じている。

 若者、外国人、障害者…。みんなが利用しやすい駅。県立大人間社会学部専任講師で、市立地適正化計画を策定するためのワークショップ「市のまちづくりを考え・動く会」副会長の阪井裕一郎さんは「多様な人に配慮した駅に変えていく必要がある」と指摘する。

 JR九州によると、日田彦山線、後藤寺線にICカードが使える自動改札を導入する計画は現在なく、市が駅舎を所有する田川伊田駅については「市から要望があれば、協議して費用負担を検討する」という。

 沿線の全駅に設置するとなると、他自治体との協力も不可欠になってくる。

 同市たがわ魅力向上課は、今春JR西日本の境線に導入された車載型IC改札機を備えた車両に注目。今後、JR九州に対して、列車の更新時にこの新車両を導入できないか協議していく方針という。

 市が約4億4700万円をかけて改修した田川伊田駅は、市長選後の26日にリニューアルオープン予定。駅舎横の通路には世界的なイラストレーター黒田征太郎氏が、山本作兵衛の炭鉱記録画をモチーフにした絵を描く。来年は東京五輪・パラリンピック。田川に人を呼び込む観光資源を生かすためにも、駅でICカードを利用できる環境づくりは、差し迫った問題といえないか。

    ◇   ◇  

 田川、直方両市の市長選と市議選が14日告示、21日投開票される。田川市長選は現職の二場公人氏(62)と新人で元市議会議長の高瀬春美氏(70)、直方市長選は現職の壬生隆明氏(66)と新人で元副市長の大塚進弘氏(67)が立候補を表明し、ともに一騎打ちとなる公算が大きい。市長・市議選を前に、市民生活に身近なテーマを掘り下げる。

=2019/04/10付 西日本新聞朝刊=

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