【乱流変流】(下)パワーバランス変化 自民亀裂修復なるか

西日本新聞

 20年ぶりの「紙幣刷新」を発表する晴れの場にも笑顔はなかった。

 9日朝、麻生太郎副総理兼財務相は財務省で記者会見し、1万円札などの紙幣刷新について説明。福岡県知事選で支援した新人が大敗した受け止めを問われると、「政府の立場で今、答弁していますんですね…」と渋りながら「自民党福岡県連の立場というのであれば、責任を感じている」とだけ答えた。

 麻生氏側近は「安倍晋三首相の総裁3選を真っ先に支持したのも麻生氏。首相との関係は揺らがない」と語るが、自民党第2派閥の領袖(りょうしゅう)の影響力低下を懸念する声は強まるばかりだ。

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 麻生氏の会見直後。自民党の二階俊博幹事長が国会内で記者会見に臨んだ。

 二階氏は10日発売の月刊誌「文芸春秋」のインタビューで「ポスト安倍」候補の一人に菅義偉官房長官の名前を挙げた。理由を問われると、「多くの候補が出てくると思うが、その1人として一例を挙げた」と語り、菅氏を持ち上げた。

 菅氏は麻生氏とは対照的に、北海道知事選で新人擁立を後押しして勝利に導いたほか、地元の神奈川県知事選でも支援した現職が3選。新元号「令和」の発表で知名度も上げ、「ポスト安倍」として光が当たる。

 一方の二階氏。全面支援した大阪府知事、大阪市長のダブル選で自民推薦候補が敗北。地元の和歌山県議選御坊市選挙区(定数1)で元秘書の自民現職が共産新人に破れ、「二階王国」の崩壊を印象づけた。

 緊張関係をはらみながら「3本柱」(与党関係者)で政権を支えてきた麻生、二階、菅の3氏だが、パワーバランスに微妙な変化が生じている。

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 故竹下登元首相が保守の固い地盤を築いた島根でも自民党県連は分裂、党推薦候補が敗れた。対立候補を支援した自民党町議は「激しい戦いだったもんだから、すぐに皆で一緒にやっていくのは一筋縄にはいかないね」とこぼす。徳島、福井両県知事選でも自民は分裂し、しこりを残した。

 今年は統一地方選と参院選が同じ年に行われる12年に1度の亥(い)年。前回の2007年は閣僚の不祥事や失言が重なり、統一地方選後に総崩れして参院選に惨敗、第1次安倍政権の退陣につながった。

 今回の統一地方選前半戦では自民党は堅調だったが、「火種」はいくつも残る。党幹部は「地方では政権への不満がたまっており、閣僚の失言や不祥事が相次ぐ。12年前と雰囲気は似ている」と警戒する。

 「結果については真摯(しんし)に受け止め、(統一地方選)後半戦、必勝を期して全力で臨んでまいりたい」。参院選まで約3カ月。亥年選挙のトラウマを抱える首相は8日、政府、与党の幹部会合で力を込めた。

=2019/04/10付 西日本新聞朝刊=