田川市の課題(下)合併浄化槽の普及 設置困難地域どうする?

西日本新聞

 家庭や事業所などから出るし尿や生活雑排水(汚水)を処理するために合併浄化槽の普及を目指す田川市の条例が1日、施行された。くみ取り便槽や単独処理浄化槽から合併浄化槽へ転換する場合、10年間に限り、従来の補助に市が50万~10万円を上乗せする。

 窓口の市環境対策課汚水処理対策室は、市民からの電話が連日ひっきりなしにかかっている。多くは、補助制度の内容や受給に必要な書類、手続きなどの問い合わせだが、「そもそも設置する場所が確保できない」という大きな問題が残っている。

 伊田商店街、後藤寺商店街に代表される店舗・家屋の密集地域だ。

 一般的に浄化槽は地下に設置される。商店主たちは「いったん商品を出して店の下に入れるしかない。工事中は休業」「大きな穴を掘れば隣に影響が出るのでは」と不安を抱いている。

 普及を進めるために、市は補助の上乗せ額を23年度までは50万円、24~26年度は30万円、27、28年度は10万円と差をつけ、5人槽の場合、くみ取り便槽の撤去費や配管設置費などを含め23年度までは計約103万円を補助する。工事費は全国平均で150万円かかるため、約47万円は自己負担となる。「後継者もいないし、借金してまで設置できない」という声も上がる。

 こうした中、伊田商店街振興組合(江頭直行理事長)は「アーケードのカラー舗装の下に設置できないか」と模索するが、そこは市道。市の対策室は「個人の構造物を市道には置けない」などとして否定的だ。重久真一室長は市と浄化槽の施工、維持管理業者などでつくる市浄化槽技術向上協議会で知恵を出し合い、「設置する意思があれば、どこであろうと1件ずつ手厚く解決策を探る」と話す。

 同協議会の松本浩一委員によると、浄化槽の技術は進歩しており、5人槽だと約30年前は容量3トンだったが、現在は同1・6トンと小型化している。

 さらに松本委員は両商店街にある勾配に注目する。規模の大きな浄化槽ほど処理水の水質が安定してくるといい、流しやすい地形を利用して「地主の了解を得た上で空き店舗や空き地に大型の槽を設置して、複数の店舗から流入管をつなぐ方法もある」と提案する。

 仮にこの方法でも、現行の補助金交付の対象基準「同一敷地内での転換」には当てはまらない可能性が高い。

 昨年9月の市議会で、汚水処理方法を従来の下水道整備から合併浄化槽の普及へと変更する関連条例案の採決は10対9と僅差だった。二場公人市長は可決後の記者会見で「内容を重く受け止め、事業を必ず成功させる」と述べた。

 市は現在、下水道については検討しておらず、10年間で約4千基の浄化槽の新設・転換を目標とし、達成すれば汚水処理人口普及率が現行の約62%から80%まで引き上げられると試算する。一方で、市長選に立候補を予定する新人高瀬春美氏は「中心市街地での下水道整備」を公約に掲げる。

 市長選、市議選では、浄化槽の設置困難地域の対応をどうするかが、争点の一つになりそうだ。伊田商店街で商店主らを対象にした市の初めての説明会は市長選告示後の16日、開かれる。

=2019/04/11付 西日本新聞朝刊=

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