半数の議会は首長提案「丸のみ」 「監視」の役割不十分 15年度以降九州アンケート

西日本新聞

馬てい形に並ぶ議席が特徴の長崎市議会の議場。顔を見えやすくすることで議論を促す狙いがあるという 拡大

馬てい形に並ぶ議席が特徴の長崎市議会の議場。顔を見えやすくすることで議論を促す狙いがあるという

 西日本新聞による九州全自治体(7県と233市町村)の議会アンケートで、前回統一地方選の2015年度以降、昨年末まで首長提出の議案を一度も修正、否決しなかった「丸のみ」議会が半数近くの115議会(全体の47・9%)に上った。議員提案で独自の政策条例を制定したのは26議会(10・8%)にとどまった。修正、否決がなく、政策条例も作らなかったのは102議会(42・5%)。行政監視と政策立案を担う議会の存在感を十分に発揮できていない実情が浮かび上がった。

 今年に入り、議会が執行部方針を大きく修正する事案が続いている。福岡市議会は、中心部でのロープウエー構想の検討費を削除する議員提案の修正案を可決、構想は撤回された。福岡県大牟田市では、国登録有形文化財の市庁舎本館解体を含んだ新庁舎整備の基本構想策定費を予算案から削除する修正案が通った。

 今回のアンケートで、県議会では福岡を除く6県が首長提出議案の修正、否決がないと回答。市町村議会で修正、否決した議案数が最も多かったのは長崎市議会の26だった。

 議員定数や報酬などを除く、政策に関する条例を議員提案で可決したのが最も多かったのは、北九州市議会と鹿児島県議会の3件。全体的に地元産の酒を使った乾杯条例が多いが「子どもを虐待から守る条例」(北九州市)や「手話言語と聞こえの共生社会づくり条例」(佐賀県)などもあった。長崎県では県議会を除く21市町の議会全てでゼロだった。

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長崎市は修正、否決最多 「根回しなし」で議論紛糾

 九州全議会アンケートでこの4年間、首長提案の議案を最も多く修正、否決したのは長崎市議会だった。その数26件。背景には「根回し」を嫌う市長と、議場で問いただす議員の“ガチンコ審議”がある。議論が長時間に及ぶこともある一方で、否決議案の中には、市民らが直接請求した住民投票条例案も含まれた。議会報告会はゼロ。14日に告示される市議選を前に「もっと市民との距離を縮めて」と注文も出ている。

 「この数字に実現性はあるの?」。3月中旬、委員会室に市議の厳しい声が響いた。審議の対象は、市南部にある交流施設の指定管理者の選出案。利用者数が順調に増えるとの予測に議員が疑問をぶつけ、執行部は押されっぱなしだった。

 「行政運営の監視役が議会だからね」と五輪清隆議長はうなずく。市議会基本条例は議会と市のあり方について「緊張関係の保持に努めなければならない」と定める。理想的とも映る。

 田上富久市長は重要議案を事前に議会側とすり合わせる根回しをしない。議会側は「軽視されている」(ベテラン市議)と感じる。前市長は開会前に必ず議員の部屋を訪れ、談笑しながら議案の説明をしたという。「何も聞いていないものを突然出されたら、いろいろ指摘せざるを得ない」(同)。修正と否決の多さは執行部への「対抗措置」とも言える。

 田上市長は2022年度の九州新幹線西九州(長崎)ルートの暫定開業をにらみ、中心部で「100年に1度」と称される規模の再開発に力を入れる。別の市議は語る。「街の根幹に関わる巨額の事業が根回しなしで次々に提案されていく。見る目がより厳しくなってきたのは確かだ」

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 修正、否決の26件の詳細を見ると、別の見方も出てくる。事業予算案7件(総額約5億1400万円)はその後の定例会で一部を除き可決、条例改正案7件は一部文言を修正・削除して可決-。市が大幅に方針を転換したケースはない。

 否決11議案のうち五つは、市民らが署名を集めて市に直接請求した住民投票条例案。公会堂解体、大型コンベンション(MICE)複合施設の建設など、賛否の分かれた事業の是非を問うものばかり。議会は事業を認めてきた経緯があり、住民投票に「反対」の意見書を付けた田上市長の姿勢に同調せざるを得なかった。

 行政に注文はするが、市議から条例案の提案はなかった。ある市議は「議会対応で手いっぱい。正直、考える余裕はなかった」と弁解する。

 この4年間の議会活動について、同市の男性会社員(32)は「結局は行政を追認しているだけ」と冷ややかに語る。市民向け議会報告会は一度もなかった。「議会はその熱さを市民との対話にも向けるべきだ」。ガチンコ議会の進化を求めている。

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議論「見える化」を

 熊本大の鈴木桂樹教授(政治学)の話 議会においては政策形成過程に透明性があるかが大事になる。議案を修正、否決したという結果だけでなく、どんな議論があったかを「見える化」しないといけない。専門性が高い行政に対抗するために、議会は市民の知恵や才能を生かしながらチェックしていくべきだ。そのためには議会報告会などでの対話が必要だ。市民の代表としての機能を恒常化して政策議論の中身をレベルアップしてほしい。

=2019/04/11付 西日本新聞朝刊=