視覚障害者に良い映画を 場面の情景 分かりやすく 音声ガイド作って20年

西日本新聞

メンバーとナレーションの練習をする川崎寛子さん(右) 拡大

メンバーとナレーションの練習をする川崎寛子さん(右)

「ぼけますから、よろしくお願いします。」より=(C)製作・配給委員会

 視覚障害者向けに映画の音声ガイド(副音声)を20年以上作り続けているボランティア団体が、福岡市にある。「バリアフリーシアター エイムing(エイミング)」。手掛けた作品は47に上る。最近はスマートフォンのアプリを使ったガイドもあるが対象はヒット作中心で、代表の川崎寛子さん(73)は「目が見えにくくても、いろいろな作品を見たいという思いは変わらず、その思いを支えたい」と語る。

 3月末、同市中央区のふくふくプラザの録音室。パソコン画面で映画のシーンを確認しながら、せりふだけでは分かりにくい映像情報を、メンバーが読み上げていく。

 「住宅街、たばこの自販機の前に茶色の猫。踏切、黄色の電車が走る…」

 こうした音声を、映画館に設置した機器から電波で飛ばし、観客はFMラジオで受信してイヤホンで聞く。映画館のスピーカーから直接聞く方法もある。

 メンバーは40~80代の42人。1998年、点訳などをする団体代表の川崎さんに、映画配給会社から「音声ガイドを作ってほしい」と依頼があった。いざ作るとなると苦労の連続だった。作品を何度も見て、作風を生かしつつ、解釈を押し付けないように客観的なシナリオを考えた。機材のセッティングやナレーションなどさまざまな作業も必要。メンバーは仕事の合間に取り組み、一本完成するのに3カ月はかかるという。

 こうした従来の手法とは別に、2014年にはアプリ「ユーディーキャスト」がサービスを始めた。上映中にスマホのマイクが映画の音声を拾い、観客はスマホを通してガイドを聞ける。16年4月には障害者への不当な差別を禁じる障害者差別解消法が施行され、大手映画配給4社がこのサービスに本格的に関わり、対象作品は人気作中心に187まで増えた。

 大手のこうした動きを受け、エイミングのようなボランティア団体は、全国で二十数団体にまで減ったという。しかし川崎さんは「こぼれ落ちた作品こそ、ボランティアが手掛けなければ」と力を込める。初めてガイドを作った作品の上映会後、川崎さんはある視覚障害者から「映画を諦めていたからうれしかった」と言われ「これが自分たちの役割だ」と感じた。

 最新作は「ぼけますから、よろしくお願いします。」。認知症の母と、その母を介護する父を、娘であるテレビディレクターが記録した映画。バリアフリー上映と銘打ち、4~6月に福岡県内で上映会がある。会場のスピーカーから直接音声ガイドを流す。

 【4月】20日、福岡市西区の「さいとぴあ」▽24日、同市南区の市男女共同参画推進センター・アミカス▽25日、同市東区の東市民センター▽26日、ふくふくプラザ【5月】22日、筑紫野市の市生涯学習センター【6月】5日、久留米市のえーるピア久留米。1300円(前売り1100円)。九州シネマ・アルチ=092(712)5297 

=2019/04/12付 西日本新聞朝刊=