性同一性障害に寄り添う医師 福岡市の泌尿器科医 平山和秀さん 友人の苦悩がきっかけ

西日本新聞 医療面

1月に開業したばかりのクリニックで、LINEに寄せられた相談をチェックする平山和秀さん=福岡市博多区 拡大

1月に開業したばかりのクリニックで、LINEに寄せられた相談をチェックする平山和秀さん=福岡市博多区

 ●「誰もが自由に生きられる社会に」

 心と体の性が一致しない性同一性障害(GID)の人たちの悩みに耳を傾け、寄り添う泌尿器科医がいる。福岡市博多区に「カズ博多クリニック」を開いた平山和秀さん(35)。GIDの友人をすぐに受け入れられず、傷つけてしまった苦い経験を糧に「誰もが自由に生きられる社会への貢献」を目指す。

 平山さんは子どもの頃、幼なじみの男子から好意を告げられ、驚きのあまり突き飛ばしてしまった。以来、疎遠になり「なぜ気持ちをくみ取ってあげられなかったのか」と悔やみ続けた。

 熊本大医学部に在学中、同窓会で幼なじみと再会。2人きりになるのを待って当時のことを尋ねると、重い口を開いた。「あのとき、心と体の性が一致していないことを強く自覚した。自分の心の性と同じ女性の体になりたい」。性別適合手術を望んでいた。

 一方で、不安とためらいも抱えていた。国内では技術のある医師が限られ、設備が不十分な医療機関ではトラブルも頻発。「安全に手術を受ける方法が見つからず、どうしてよいか分からない」と打ち明けてくれた。

 友人の苦悩に触れ、性別適合手術への関心を高めた平山さん。「手術には性器周辺の臓器の知識が役立つ」と、専門は泌尿器科を選んだ。京都大病院や九州医療センター(福岡市)などに勤め、男性器に絡んだ手術を5千例以上経験。性別適合手術そのものの経験はないが、がんなどの治療で精巣摘出などの経験を積んだという。昨年、GID学会に加入し、1月にクリニックを開業した。

 性別適合手術は昨年4月から、一定の条件を満たせば公的医療保険の適用となった。GID学会などによると、保険適用となる認定施設は国内6カ所のみで、九州にはない。学会認定医は全国に約20人だけ。最も実績がある認定施設の岡山大病院や札幌医科大病院でも手術件数は年4、5件にとどまるという。

 一方、GIDの患者は全国に約4万6千人との推計もある。学会のガイドラインを無視し、ずさんな体制で手術を行うクリニック、タイなどの海外で手っ取り早く安価に手術を受ける人も多いとみられる。

 このため、術後に合併症が起こるケースは頻発し、死亡事故もあった。学会理事長の中塚幹也岡山大大学院教授は「手術の希望者が増える中、安全に手術が受けられる環境整備は喫緊の課題」と強調する。

 クリニックで泌尿器疾患全般の治療をこなす平山さんも、手術後のトラブルを何度も診てきた。現在、学会認定医を目指しており、男性から女性への性別適合手術(自由診療)も手掛けていくつもりだ。

 来院しなくても相談できるよう、無料通信アプリLINE(ライン)での相談窓口も開設。学会のガイドラインは「手術には精神科医2人による診断が必要」と定めているにもかかわらず、正確な診断がないまま手術を受けようとする患者からの相談が相次ぐ。

 「自分自身のアイデンティティーを左右する問題。本当に必要かどうかよく考えて」。焦る患者とはじっくりコミュニケーションを取り、落ち着いて考えるように促している。

 GIDへの社会的認知は広がりつつあるとはいえ、差別や偏見を恐れる人は多いと感じる。「身近なクリニックとして一人一人に丁寧に向き合っていきたい」

=2019/04/08付 西日本新聞朝刊=

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