公務員、ベンチャーで修行 福岡市職員 全国初、特区特例活用し3年

西日本新聞 ふくおか都市圏版

原口唯社長と握手し、新たな仕事に意気込みを見せる梶原慶子さん(左) 拡大

原口唯社長と握手し、新たな仕事に意気込みを見せる梶原慶子さん(左)

 国家戦略特区として認められた公務員の民間転職の特例制度を全国で初めて活用し、福岡市職員の梶原慶子さん(33)がベンチャー企業に今月転職した。特例は、公務員を辞めてベンチャーに就職した人が3年以内に市役所に戻れば、退職手当の算定で退職前の在職期間を通算するというもの。スタートアップ(創業)推進を掲げる福岡市は、特例を生かした“武者修行”に出る職員が増えることを期待している。

 梶原さんは2004年に市役所入り。市民局や道路下水道局、教育委員会などで勤務した。

 加わったのは創業2年の福岡市中央区の「YOUI」(ようい)。原口唯社長(32)が1人で立ち上げた会社の2人目のメンバーになった。企業やNPOへのコンサルティングを通し、街づくりプロジェクトの策定や実行を手助けするベンチャーだ。

 原口社長は性的少数者(LGBT)の団体支援をしていた際、九州で初めてLGBTカップルを公的認定する「パートナーシップ宣誓制度」の導入(昨年4月)に向けて市の担当者をしていた梶原さんの仕事ぶりに注目した。団体に対し、親身な姿勢でさまざまなアイデアを提案している様子に「仕事だからやるというのとは違う意識と起業家精神を感じ取った」という。

 会社に来てほしい、と誘ったが梶原さんは「行政でないとできない仕事もあるから」と二の足を踏んだ。そこで思い出したのが2016年に認められた国家戦略特区の特例。創業5年以内で国家戦略特区エリア内に拠点のある企業が国に認定されれば、公務員を退職した人を雇う際、その人のリスクを減らせる。3年以内ならば原則、元の職場に戻れるし、退職手当でも不利にならない。

 今年2月、YOUIは特例を使える企業として認定を受け、梶原さんも転職を決意した。福岡市によると特例を使える企業は他にもあるが、採用にはつながっておらず、梶原さんは国家・地方の両公務員で全国初の事例となった。梶原さんは「福祉とアートの連携に取り組みたい。行政での経験を生かし、会社発展に貢献する」と意気込む。

 ベンチャー企業が経済をけん引している米国では、企業と官公庁の人材の行き来が盛ん。一方、日本では創業間もない企業にとって人材確保は大きな課題となっている。福岡市の特区事業担当者は「特例が挑戦したい職員の背中を押す仕組みの一つになれば」と期待する。

=2019/04/13付 西日本新聞朝刊=