「人生の幕を下ろした時に頂けるよう励みます」…

西日本新聞

 「人生の幕を下ろした時に頂けるよう励みます」。平成の終わりとともに引退した米大リーグのイチロー元選手が国民栄誉賞を辞退した。3度目だそうだ。野球人としてまだやりたいこと、やり残したことがあるのだろう

▼頑固なようで謙虚でもある。これまでの国民栄誉賞(26個人・1団体に授与)を振り返ると、受賞者の半数近くは物故者。それぞれの道を貫いて亡くなった後、栄誉に輝いている。歌手の美空ひばりさんもその一人

▼他界したのは平成元年。52歳の若さだった。最後の曲「川の流れのように」は改元直後に発表され、北九州市での公演が最後のステージになった。亡くなる2年前に体調を崩し福岡市で入院・療養生活を送ったこともあった

▼元年にはこの2人も逝った。松下電器産業(現パナソニック)の創業者松下幸之助さんと、漫画の神様こと手塚治虫さん。美空さんを含め昭和史を語る時には欠かせない存在だ

▼共通するのは時代を超える価値を生み出したこと。美空さんの曲は今なお広く愛され、それこそ「川の流れのように」歌い継がれている。ロングセラーとして書店に並ぶ松下さんの経営哲学書や手塚さんの作品集もまたしかり

▼国内外で大きな出来事が相次いだ平成は激動の時代といわれる。けれども日本人の一徹さは変わらず、大切なものが脈々と受け継がれてきた、そんな時代にも見える。平成も残すところあと2週間。

=2019/04/16付 西日本新聞朝刊=