「学生村」の活気再び 南阿蘇村黒川地区の女性ら新組織 熊本地震3年

西日本新聞

かつての「学生村」再興に向け、「すがるの里」のメンバーと今後の活動について話す渡辺ヒロ子さん(左端)=14日、熊本県南阿蘇村 拡大

かつての「学生村」再興に向け、「すがるの里」のメンバーと今後の活動について話す渡辺ヒロ子さん(左端)=14日、熊本県南阿蘇村

 2016年4月の熊本地震で大学生と住民計4人が犠牲になった熊本県南阿蘇村黒川地区で14日、地元の女性たちが中心になり、新組織「すがるの里」を旗揚げした。地震前、東海大農学部キャンパスがあった同地区で、かつての「学生村」再興を目指す。会長に就いたのは渡辺ヒロ子さん(74)。経営していた学生アパートでは、入居したばかりだった清田啓介さん=当時(18)=が亡くなった。失意の3年を思いながら「再起への一歩につなげていきたい」と前を向く。

 メンバーの女性たちが営む下宿やアパートでは地震前、学生約800人が生活。渡辺さんは1982年から賄い付きのアパートを経営してきた。

 入学直後に被災した清田さんは、動物園や水族館の飼育員になるのが夢だったという。「眼鏡を掛けたかわいい男の子でした」。自責の念に苦しみ、「助けてあげられなくて申し訳ない」と両親にわびた渡辺さん。「自然災害ですから、そんなに自分を責めないで」と言葉を掛けられ、何とか持ちこたえてきた。

 自宅とアパートが全壊し、渡辺さん夫婦は長女が暮らす同県南小国町のみなし仮設で生活した。体調もすぐれない日々の支えだったのは、やはり学生たちだった。電話をかけてくれたり、花を届けてくれたり。今月になり、ようやく地元に再建した家に戻ってきた。

 「すがるの里」は当面、復旧した東海大の実習農場で学ぶ学生たち向けに手作り弁当を販売する。「今度は私たちが恩返しをする番」。学生たちに好評だった「里芋入りの炊き込みご飯」を作ろうと思っている。

 発足式があったのは旧長陽西部小学校。村は校舎内に展示室や弁当の調理場を整備し、震災の記憶を語り継ぎ、学生と住民の交流拠点にする計画だ。会の名称「すがる」は、地元にある力強い滝にちなんだ。渡辺さんは「学生さんたちとの関係を結び直すことで、地域を元気にしていきたい」と力を込めた。

=2019/04/16付 西日本新聞夕刊=