長崎市長銃撃から12年 「偲鳥会」活動に区切り 故伊藤氏後援会メンバー高齢化

西日本新聞

伊藤一長氏の墓を守る浦川信治さん。今も「市長にあいさつしたい」と訪れる人がいるという=9日、長崎市下黒崎町 拡大

伊藤一長氏の墓を守る浦川信治さん。今も「市長にあいさつしたい」と訪れる人がいるという=9日、長崎市下黒崎町

 長崎市の伊藤一長前市長=当時(61)=が2007年4月の市長選期間中に射殺された事件から17日で12年。後援会メンバーでつくる「偲鳥(しちょう)会」は高齢化が進み、今年の十三回忌で活動に区切りを付ける。伊藤氏の墓守を託された男性は「事件を風化させてはならない」と、墓を守り続けることを誓う。

 今月6日、市内のホテルで偲鳥会が開いた「十三回忌の集い」。伊藤氏の遺影と、氏が好んだヒマワリが配された祭壇を前に、田川安浩会長(83)は「悲しみだけが残されていく」とあいさつを述べた。出席者は約100人。伊藤氏とともに長崎発展の夢を追った日々を思い起こし、時間を過ごした。

 「あの夜、私が覆いかぶさっていれば…。悔しかですよ」。選挙中、伊藤氏の後方で不審者を警戒するのが常だった田川さん。事件発生の直前まで事務所で会議をしており、その場で伊藤氏を見送ったのが最後になった。「連れて行ってくれなかった」。盟友に先立たれた寂しさ、事件を防げなかった後悔を、会を続ける力に変えてきた。

 偲鳥会は命日に長崎に集い、JR長崎駅の向かい側、国道202号沿いの歩道上の現場に花を手向ける。ただ、百数十人いた会員も年を取った。会としての活動は今年を節目とし、今後は有志が集まりたいときに集い、故人をしのぶ。

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 長崎市の北西部、角力灘(すもうなだ)を望む外海地区に伊藤氏の墓がある。「故郷の山口県と似ているから」と生前に決めた場所だ。近くの浦川信治さん(65)はこの12年、墓の花の世話やごみ拾いを欠かさず続けてきた。

 道路の拡張や街灯の設置。市民の要望に真剣に耳を傾ける「地域密着型」の伊藤氏の人柄を慕っていた。伊藤氏を囲む地元住民の会を通じて交流が生まれ、事件後は、遺族の住まいが遠いことから墓守を託された。

 当初は墓参りをする人の姿が絶えず、案内板も設置したほどだったが、今では1日に1人訪れるかどうかだという。時間の経過で記憶が薄れるのはやむを得ない。ただ、暴力で人の命を奪う理不尽な事件が風化してはいけない、と考える。「地域に貢献した人がこの地を選んでくれた。いつまでも墓を守りたい」。そう強く思う。

 長崎市は17日午前9時、今年で最後となる献花台を事件現場に設置。5月11日には暴力追放の決意を新たにする市民集会が開かれる。

=2019/04/17付 西日本新聞朝刊=