広がるライフレスキュー事業<下>多職種連携、支援の幅が広がる

西日本新聞

ライフレスキュー事業の連絡会から届いた食材を仕分ける平川美香子さん(中央)。「特に調味料が足りないから助かります」と笑顔を見せた 拡大

ライフレスキュー事業の連絡会から届いた食材を仕分ける平川美香子さん(中央)。「特に調味料が足りないから助かります」と笑顔を見せた

 病気や失業などで生活が立ち行かなくなった人を、福岡県内の社会福祉法人が連携し、公的支援に代わって緊急援助する「ライフレスキュー事業」。相談者は30~60代が多いが、誰にも頼れずこの事業にたどり着く若年層もいる。

 同県に住む10代の少女は出産間近の昨春、この取り組みに助けられた。父親やきょうだいと暮らし、家計は父の生活保護費が頼り。出産費用や衣類、ベビー用品を何も用意できず、入院できない状態だった。

 ライフレスキューに加わる地元の社会福祉協議会と社福法人は、自治体から相談を受け、まず少女を社福法人運営の福祉施設で預かった。社協と施設の担当職員が、資金不足や父との関係悪化で悩む少女と話し、不安を和らげた。「出産まで1週間しかないのにお金がない。どうしようもない状態だった」。施設の女性職員(37)は振り返る。

 出産費用や産後の生活費は、父とは別に少女自身が生活保護を受けて賄うことにした。ただ、父と同一世帯のままでは受給できないため、出産後に世帯を分離して申請することに。その間、少女を支えたのがライフレスキューの基金だ。

 社福法人が資金を出し合ったこの基金で、入院保証金やベビー用品などの支払いを代行。子どもが生まれた後も食費などを賄い、社協は肌着やおむつなどを提供した。出産して間もなく世帯分離と生活保護を申請し、半月ほどで支給されると日々が落ち着いた。

 少女は今、子どもと賃貸住宅で暮らす。施設の男性職員(36)は「入院に必要なお金や物が全くなく、産後の生活の見通しも立たなければ、不安で出産にも影響したと思う。本人を安心させることができたのも大きい」と語る。

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 ライフレスキューの事務局を務める福岡県社協によると、相談者に共通する課題は貧困だが、年代ごとに悩みも異なるという。

 例えば30代以下なら、他の年代と比べて「子育て」「就業トラブル」の割合が高い。40~50代は「失業」、60代以上は「住宅」「家族関係」。生活環境では、未婚や離婚で頼れる家族が身近にいない人、失業か休職している人、借入金がある人-の相談が多い。複数の課題が絡んで行き詰まっており、解決は難しい。

 こうした人に、ライフレスキューでは各種施設の職員が専門性を生かして対応する。高齢者や障害者、児童福祉施設などを運営する社会福祉法人でつくる12団体が運営委員会を組織。高齢者や障害者施設なら社会福祉士やケアマネジャー、児童福祉施設なら保育士などが相談支援に当たる。各地の社協が事業に加わっており、支援の空白域も小さくしている。

 ある30代夫婦は、このネットワークに救われた。夫が失業し、食費などを基金で賄った。ところが、やりとりで母親が「子どもがご飯を食べない」「離乳食の作り方が分からない」と打ち明けた。子どもが風邪をひいているのに風呂に入れることも。ライフレスキューに参加する保育所に相談し、調理や子育ての助言を受けられるようにした。

 支援した同県粕屋町の特別養護老人ホーム「緑の里」の安河内達(たつし)施設長(44)は「最近は若い世帯やシングルマザーの困窮が増えている。SOSを拾い上げる努力を一層していかないと」と危機感を感じている。

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 取り組みは徐々に知られるようになり、支援の幅も広がっている。

 3月下旬、福岡県糸島市の公民館で開かれた「子ども食堂」。子どもたちがカレーを食べ、はしゃぐ会場に、レトルト食品や菓子、調味料などが入った段ボールが届いた。コンビニ大手セブン-イレブン・ジャパンから、閉店した店舗で残った品として譲り受けた。

 同社が各地で続ける社会貢献活動の一環。他県では主に県社協に提供されるが、福岡ではライフレスキューで社福法人や行政、社協、企業などがつくる各地域の連絡会が寄贈先の一つになった。糸島地区の連絡会は、その商品を子ども食堂に寄付。食堂を開くボランティア団体の平川美香子さん(57)は「子どもだけでなく、孤立している1人暮らしのお年寄りや妊婦も呼びたい。食材が増えると助かります」と笑顔を見せた。

 ライフレスキューの運営委員会の平田直之委員長(67)は高齢者人口がピークになる「2040年問題」を見据え、事業の将来像をこう語る。「課題を抱えた人は増え、公的制度だけではますます対応できなくなる。まずは社福法人が連携し、その上で地域ごとに企業や郵便局、医療機関なども加わって生活を支える形ができないか、考えていきたい」


=2019/04/17付 西日本新聞朝刊=