「幻の味になった」店主が急逝…人気ラーメン店、静かに幕 悼む常連客

西日本新聞 筑後版

 昼間だけ営業していた久留米市役所近くの人気ラーメン店が昨年10月、静かにのれんを下ろした。優しい味わいの豚骨スープが特長だった「来雷軒」(同市櫛原町)。調理場を切り盛りしていた店主の半田治さんが一時休業を取り、春から夜間営業も始める準備を進めていたが今年1月7日、肺がんで急逝した。享年54。早すぎる死を悼む声が広がっている。

 店の場所は、元は半田さんの祖父から続く司法書士事務所だった。半田さんも手伝っていたが、代表だった父親が亡くなって閉鎖。次の仕事として目を付けたのが、幼い頃から身近にあったラーメン店だった。飲食業の経験はなく「最初は冗談かと思った」と妻の良子さん(54)は振り返る。

 半田さんが目指したのは「塩分が気になる人や高齢者でも毎日食べられるラーメン」。1日に何軒も食べ歩いたり、いろんなしょうゆでスープを試作したり、試行錯誤を重ねた。ラーメン店の関係者から助言も受けたが、店で修業した経験はなく、独学だった。

 約1年の準備期間を経て2012年6月にオープンしたのが来雷軒。豚骨ラーメン発祥の久留米市中心部は有名店や老舗店がひしめく激戦区だが、当初こそ客が1日数人という日もあったが、口コミで評判が広がって混み合う人気店になった。雑誌やブログでも数多く取り上げられた。

 従業員は雇わず、基本的に夫婦2人で店を回していた。「毎日、疲労困憊(こんぱい)でした」と良子さん。体調不良で昨年10月下旬から一時休業。年明けにも再開する予定だったが、半田さんに病魔が忍び寄っていた。年末に足元がふらつき、市内の病院でステージ3の診断。すぐに入院したが、帰らぬ人になった。

 釣りやバイクなど、多趣味で交友関係が広かった半田さん。開店当初からの常連客だった市職員の白木守さん(51)は「もう食べられないと思うと本当に残念。幻の味になってしまった」と肩を落とす。

 良子さんは「弟子を取って、うちの味や屋号を継いでもらいたいという思いも持っていた。本人が一番悔しかったでしょう」と話す。来雷軒の看板は今もそのままだ。店をどうするのかは、まだ決めていないという。

=2019/04/18付 西日本新聞朝刊=

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