人吉市長選 候補者に聞く

西日本新聞

田中信孝氏=無所属元職 松岡隼人氏=無所属現職

 21日投開票の人吉市長選には、会社社長の無所属元職田中信孝氏(71)と、無所属現職の松岡隼人氏(41)の2人が立候補し、有権者に支持を訴えている。両候補の政策や横顔を紹介する。

 =届け出順

悲願実現へ再起を決意 田中 信孝氏(71)=無所属元職

 4年前、3選を目指し万全の態勢で臨んだはずの市長選でまさかの落選。「油断、慢心があった。一から出直す気持ちで臨む」。自らを戒めながら、選挙戦への決意を語る。

 “浪人中”の4年間には、「もう一度、しっかりと勉強したい」と熊本大大学院に通い、3月に修士課程を修了した。修士論文のタイトルは「降雨による洪水や土砂災害から住民を守る研究」。大学院では多くの教員と議論を重ね、「行政に携わる上で、大きな視点で物事を眺める必要性を改めて学んだ」と振り返る。

 市長選立候補への決意を固めたのが昨年12月。1月の出馬表明後、徒歩や自転車で市内1万7千世帯を訪問し、市民の声をじかに聞いた。「自宅前の護岸が崩れて家の地盤が沈下しているが、行政が相手にしてくれない」と訴える姿に、自ら地域に足を運ばなければ「人吉の今」は見えてこない、と痛感した。

 市長選の争点の一つ、市庁舎建て替えについては、「現計画は身の丈にあっていない」と疑問視。「AI(人工知能)時代になれば職員も激減する」と規模縮小を訴える。

 市長時代に果たせなかった、JR肥薩線の世界遺産登録が悲願。明治期の姿を残す文化的価値を強調し、「実現すれば、世界中から観光客が訪れて、人吉発展の大きな力になる」と波及効果を確信する。

 趣味は読書。小学校から大学まで、剣道、空手、合気道で鍛えた体が、今の健康の基盤を築いた。

芽生えた好循環 次代に 松岡 隼人氏(41)=無所属現職

 「精いっぱい走ってきた。直面する問題に取り組むことで根を張り土台を造り、市民との信頼関係を醸成した」。37歳で初当選後、市長としての4年間をそう自己分析する。

 経営不振で廃止された国民宿舎を改装し、「まち・ひと・しごと総合交流会館 くまりば」を開設した。人吉観光の起点としての機能を担いながら、市民の起業・創業拠点施設の役割も与えた。人脈を生かした、IT企業のサテライトオフィス誘致も実を結びつつある。「芽生え始めた好循環を、さらに広げる4年間にしたい」。2期目の目標は明快だ。

 大学卒業後、熊本市内で働いていたが、長男が生まれる直前、27歳で帰郷を決意した。「自然に囲まれて子育てをしたかった」。当時をそう振り返るが、その古里は、人口減少と少子高齢化による「困り事」が全国に先駆けて進む。「だからこそ人吉には、解決策を次の時代に売り込めるビジネスチャンスがある」。ピンチを逆手にとり、振興策のビジョンを描く。

 前回の市長選では、既存施設を活用した市役所分庁舎案を提示したが、熊本地震で方針を転換。「国からの新たな財政措置で、財源の見通しがついた。防災拠点としての市本庁舎の機能を考えれば、現行計画がベストな選択」と、有権者の理解を求める。

 政治理念は「次代へ人吉を引き継ぐこと」。中学のサッカー部に所属する長男の応援観戦が、多忙な日々の息抜きだ。

=2019/04/18付 西日本新聞朝刊=