【きょうのテーマ】世界各地でまちづくり 国連ハビタット福岡本部を訪ねた

西日本新聞

ハビタットの役割について説明する星野幸代さん 拡大

ハビタットの役割について説明する星野幸代さん

村人になったつもりで、災害からの復興に必要なことを話し合うこども記者たち ハビタット福岡本部ではさまざまな国出身の職員が働いていた 国連ハビタット福岡本部が入るアクロス福岡

 ●住まいに困った人のお手伝い 九州唯一の国連機関

 世界には災害や戦争、貧困などで住まいに困っている人が大勢います。そんな人たちの手助けをする国際機関が「国際連合人間居住計画(国連ハビタット)」です。アフリカのケニアなど計4カ所の事務所のうちの一つが福岡市にあります。九州でただ一つの国連機関、ハビタット福岡本部をこども記者が訪ねました。

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 会議室に入ると、壁には大きな世界地図が貼ってあった。星野幸代・本部長補佐官が「福岡に事務所があるのは、アジアの国々に近く仕事がしやすいためです」と説明した。

 福岡本部が担当するのはアジア太平洋地域28カ国。開発途上国と呼ばれる国々は、自国だけではノウハウや資金が不足し、問題を解決できないため国連が協力する。これまでアフガニスタンの紛争で破壊された街の再生、ネパール大地震の復興など約450の支援プロジェクトを行ってきた。プロジェクトごとに建築や都市計画、法律の専門家など数十人から最大千人の職員が雇われることもある。各国に出張する福岡本部の職員は全体のまとめ役だ。

 「主役は住民です」。星野さんがスクリーンに映したのは、家の模型を囲んで話し合い、自分たちで家を建てる住民たちの写真だった。「自分で考えてつくったものには愛着がわく。再び家が壊れても、経験を生かして自分たちだけで建て直せるのです」と言った。

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 住まいに困る理由はさまざまだ。地球温暖化の影響で海面が上がって海に近い家が水浸しになることや、戦争で家を壊されることもある。それでも「自分の家」が再建されると立ち直る一歩が踏み出せるという。

 貧困も大きな問題だ。家があっても丈夫でなければ災害で壊れてしまう。お金や技術だけでなく、「地震に強い安全な家を建てるための法律作りも手伝います」と星野さんは話した。

 仕事を求めて農村から都会に出てきた人で人口が急増し、不衛生できゅうくつな環境で暮らす人も多い。星野さんはタイやモンゴルの写真を見せた。高層ビルが立つ地区の横に、小屋のような家がひしめき合うスラム街があった。星野さんは「豊かに見える街も裏に入れば汚れた川の水を飲んで生活するような暮らしがある」と説明した。汚水をきれいにする下水槽、ごみ処理施設の整備もハビタットの重要な仕事だそうだ。

 ●「住民が主役」 ワークショップで体験

 「住民が主役」というハビタットのプロジェクトの進め方を、こども記者もワークショップで体験した。4人ずつの班になり、村人のつもりで災害にあった村の復興プランを考えた。

 村は「大雨による洪水で畑や家、橋が壊れてしまった」という設定。もともとトイレや学校、働く場所も近くにはない。そこでハビタットは支援金800万円を用意。村の地図を囲み、お金の使い道を話し合った。「最初に家を修理したい」「職業訓練所をつくって仕事について、まずはお金を稼ごう」。順調にプランができる班もあれば、遠慮してあまり意見が出ない班もあり、みんなで話し合う難しさを実感した。

 実際のプロジェクトでも、話し合いの場づくりには工夫が必要だという。例えば男性や年長者を尊重する文化がある地域では、女性や子どもだけの話し合いの場を用意するそうだ。星野さんは「使いやすいキッチンやトイレの位置、学校の場所を決めるときは女性や子どもの目線は欠かせません」と話した。その土地の価値観を大事にしながらまちづくりをしていることを学んだ。

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 ハビタット福岡本部は、学校などでのワークショップ開催の依頼も出前授業として受け付けている。

 ●9カ国約20人の職員 職場では英語で

 福岡市・天神にあるハビタット福岡本部のオフィスでは、マレーシアやスリランカ、ベルギーなど9カ国約20人の職員が働いている。職員たちはこれまで、各国の政府や民間企業、ほかの国連機関で都市計画や建築などの仕事を経験してきたという。

 ノルウェー出身のラース・ストーダルさんは「私)は今、10月にマレーシアで3千人が参加する大きな国際会議の準備をしています」と教えてくれた。インド出身のスリニバサ・ポプリさんに、国連の機関で働こうと思った理由を聞くと「より広い世界の人たちを助けることができるから」と優しそうな笑顔で答えた。

 英語が公用語ではない国出身の人たちも、職場では英語だった。私たちも将来のためにしっかりと英語を勉強すること、そして何よりも「伝えよう」という気持ちが大切だと感じた。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼国際連合(国連) 英語表記は「United Nations(UN)」。第2次世界大戦後の1945年に設立された。国々が武力を使わずに協力して世界を平和にし、貧困や不正とたたかうことを目指す。3月現在、193カ国が参加している。さまざまな種類の問題に取り組むため、ハビタットやユニセフ(国連児童基金、ユネスコ(国連教育科学文化機関)などの機関がある。国連の本部は米国・ニューヨーク。

 ▼国連ハビタット 1978年に創設された国連機関。福岡本部は97年に開設された。ハビタットはラテン語で「住まい」の意味。福岡本部は福岡市・天神のアクロス福岡8階にある。同本部=092(724)7121。

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=2019/04/18付 西日本新聞朝刊=