【次代へ 平成から令和】原発の町、描けぬ未来 佐賀・玄海町 震災機に町民意識変化

西日本新聞

廃炉が決まった九州電力玄海原発1、2号機(写真手前の2基)。地元佐賀県玄海町の岸本英雄前町長(右下)は国の原発政策に「先が見えない」と注文を付ける 拡大

廃炉が決まった九州電力玄海原発1、2号機(写真手前の2基)。地元佐賀県玄海町の岸本英雄前町長(右下)は国の原発政策に「先が見えない」と注文を付ける

 厳重に警備された出入り口を、作業員を乗せたバスやトラックが慌ただしく行き交う。佐賀県玄海町の九州電力玄海原発。「働く人が戻ってきた、というか(再稼働の)前より増えたよね」。原発から約1キロの場所に暮らす八島一郎さん(71)の顔がほころぶ。

 玄海原発は昨年、3号機が7年3カ月ぶりに、4号機が6年半ぶりに再稼働した。原発の運転に関わる九電や関連会社の社員に加え、安全対策施設の工事に関わる作業員が出入りする。九電によると現在、約3千人が働いているという。

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 「佐賀のチベット」-。玄海町がある上場台地は水源が限られ産業に乏しかったため、かつてそう呼ばれた。農閑期に出稼ぎする農家や、仕事を求め町外に出る若者が多かった。町が一変したのが原発の誘致だった。地元で仕事が生まれた。約5600人の町民の15%ほどが原発で働く。

 八島さんも原発の誘致を機に町に戻った。高校卒業後、関東で働き、建設計画が発表された翌年の1969(昭和44)年にUターン。大手ゼネコンに現地雇用枠で入社し、75年に稼働した1号機から、平成に入って完成した3、4号機まで一貫して建設に携わった。

 燃料コストが安く、二酸化炭素(CO2)も排出しない「未来のエネルギー」とされた原発。4基が稼働していたころ、年間の発電量は、九電管内の電力量の25~30%程度を占めていた。「九州の電力の3分の1はうちの町で作っているという自負はあったね」。八島さんは懐かしむ。

 原発は町を潤した。町予算のうち、税収や電源立地地域対策交付金など原発関連の歳入は約60%に及ぶ。大ホール付きの町民会館、海上温泉施設…。次々とハコモノが建った。「平成の大合併」では潤沢な基金の流出を嫌い、周辺自治体との協議会から離脱した。

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 原発と二人三脚で歩んだ町は、2011(平成23)年の福島第1原発事故で転機を迎える。「エネルギーを取り巻く環境が変わった」。当時の町長だった岸本英雄さん(65)は振り返る。「玄海とは地質も地勢も違うから同じような事故は起こらない。それでも漠然とした不安が生まれた。本当にこんな事故が起きたらどうなるだろうと。3年くらいはトラウマがあった」

 13年には安全性の要求を厳しくした新規制基準が施行。「脱原発」の空気も広がった。玄海原発も長期停止し、町の経済も冷え込む。「原発が全部止まっても大停電が起きなかったのは何よりショックだった」と八島さん。町民の意識も変化を余儀なくされた。

 巨額の安全対策費とてんびんにかけながら、電力会社は古い原発を次々と廃炉にしていく。九電も玄海1、2号機を廃炉にした。

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 「令和」は、廃炉作業が本格化する時代となる。17年に準備が始まった玄海1号機の廃炉作業は43年までの計画。2号機も同程度の期間が見込まれる。「廃炉作業の間は、人手が増えるので町はそれなりに潤う」と岸本さんは語る。

 では、その「先」は-。これまで一体となって原発政策を進めてきた国、電力会社、立地自治体の関係はほころびを見せる。

 九電のある幹部は「一電力会社が原発を背負える時代じゃなくなった」と漏らす。安倍晋三政権は30年の電源構成に占める原発の割合を20~22%とするが、現状は10%未満。新設や建て替えは事実上、棚上げしたままだ。岸本さんは「国の計画は現実に即していない。新設や増設を先導するべきだ」と批判する。

 一方、八島さんは「原発を新しく造るのは無理やろう」。廃炉も「技術は変わる。時代の流れだから仕方ない」と淡々と見つめる。

 エネルギーの在り方は、地域の未来に直結する。「今は町の将来が見えない」。岸本さんの言葉に、もどかしさがにじむ。

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【ワードBOX】玄海原発

 佐賀県・東松浦半島の西部に立地。九州最初の原発として1号機が1975年に運転を開始。81年に2号機、94年に3号機、97年に4号機が運転開始。出力は1、2号機が55万9千キロワット、3、4号機が118万キロワット。3号機は2009年から、使用済み核燃料を再処理したプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマル発電をしている。九電は17年から1号機の廃炉作業に着手。19年4月には、2号機の廃止も経済産業相に届け出た。

=2019/04/20付 西日本新聞朝刊=

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