非常勤労災の請求権認めず 自殺女性の両親敗訴 福岡地裁判決

西日本新聞

亡くなった森下佳奈さんの写真と共に、記者会見に臨む母親の眞由美さん=19日午後、福岡市内 拡大

亡くなった森下佳奈さんの写真と共に、記者会見に臨む母親の眞由美さん=19日午後、福岡市内

 北九州市の非常勤職員だった森下佳奈さん=当時(27)=が自殺したのは上司のパワハラなどが原因なのに、非常勤を理由に労災認定の請求権を認めない市条例は違法だとして、両親が160万円の損害賠償を市に求めた訴訟の判決が19日、福岡地裁であった。鈴木博裁判長は「条例を違法と評価することはできない」として訴えを棄却した。両親は控訴する方針。

 両親は、この訴訟とは別に、上司によるパワハラと自殺には因果関係があるとして、労働基準法に基づく遺族補償など約1210万円を求めた訴訟を起こしており、同地裁で係争中。

 判決によると、森下さんは2012年から同市の戸畑区役所で子どもや家庭問題の相談員を担当する非常勤職員として勤務。13年1月に重度のうつ病と診断され、同3月に退職。15年5月に自ら命を絶った。

 判決で鈴木裁判長は、条例が非常勤の遺族らに労災認定の請求権を認めていない一方、遺族補償に関する請求は可能だとし「請求権の行使が妨げられたとは言えない」と説明。両親の労災認定請求の申し出を断った当時の市の対応について「条例の解釈や運用を誤ってはいない」と判断した。

 森下さんの訴訟をきっかけに、総務省は昨年7月、非常勤職員にも労災認定の請求権を認めるよう全国の自治体に通知。同市も条例を改正し、非常勤職員本人や遺族が請求できるようになった。同市の北橋健治市長は「市の手続きが認められたと考えている」とコメントした。

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「命への差別」母親声震わせ 訴訟契機に市条例改正

 非常勤を理由に労災認定の請求権を認めていなかった北九州市の条例を「違法ではない」と判断した福岡地裁判決後、自殺した森下佳奈さんの母親、眞由美さん(57)が記者会見し「命が関わる問題でも差別があると認識させられた」と悔しさをにじませた。

 眞由美さんによると、佳奈さんは同市への就職が決まると目を輝かせて喜び、「一生、この街に住む」と話していたという。

 訴訟を契機にした総務省の通知を受け、市の条例は改正された。周囲からは「望みがかなったね」と言われることもある。眞由美さんは「私の中では片付けられないものがある。母として、娘のことで結果が出なければ納得できない」と声を震わせた。

=2019/04/20付 西日本新聞朝刊=