稲作再開への道険しく 霧島・硫黄山噴火1年 農家、麦への転作に希望

西日本新聞

 宮崎県えびの市の霧島連山・硫黄山が250年ぶりに噴火して19日で1年。硫黄山周辺の赤子川、長江川、川内川はヒ素を含んだ泥水や水質の酸性化を受け、流域の宮崎、鹿児島両県で昨季、約1100戸の農家が米作りを断念した。水質の改善は進んではいるが、今季は両県で約500戸が米を作らない見通し。転作への負担も重く、農家の不安はなお消えないが、麦作りに新たな希望を託そうとする農家も出てきた。

 「ここらへんは見渡す限り今年も稲作ができません」。18日、長江川下流から農業用水を引いていたえびの市の島内地区を訪ねると、農業法人「西郷営農」の種子田(たねだ)幸三郎代表(72)がため息をついた。

 西郷営農は地域農業を支えようと、地元の農家7人が2017年4月に営農組合を法人化して設立。同年秋に約1100万円かけて田植え機とコンバインを購入したが、噴火の影響で昨季は管理する水田の9割で稲作ができなかった。

 同市では昨季、全農家の1割にあたる364戸が稲作を断念。硫黄山に近い赤子川や長江川の酸性度はいまだ高く、今季も260戸が稲作できない見通しだ。

 えびの市と鹿児島県伊佐市の川内川では、水質に異常を感知すると水門が自動で閉まるシステムを両県が設置する予定。稲作再開へ流域農家の期待は大きい。ただ鹿児島県湧水町では、川内川の堰(せき)に堆積する泥のヒ素濃度が不安定で今季も約200戸が稲作を見送る。

 米作りできない農家には収入減が重くのしかかる。昨季は作付けの準備をしていた農家に農業共済金が特例的に支給されたが、今季は支払い対象外。えびの市は飼料作物などへの転作といった取り組みに10アール当たり3万~9万2千円を支給するが、転作は湿田の排水工事や農機具導入が必要な場合もあり、二の足を踏む農家も少なくない。

 そうした中、西郷営農では昨年12月、島内地区の水田で、雨水で作れる大麦の一品種「もち麦」を試験的に植えた。生育は順調で5月にも収穫できる見通し。もち麦は食物繊維が豊富で人気があり、来季は作付けを増やす方針だ。

 「何もしなければ収入が途絶えてしまい、大型農機具の借金だけが残る。前に進まなくては。今はもち麦が希望になっている」と種子田代表。「農家が営農への意欲を失えば、田畑が荒廃してしまう。行政は代替水源の確保を急ぎ、農機具のレンタルなど長期的支援にも取り組んでほしい」と話す。

=2019/04/20付 西日本新聞朝刊=

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