「学びの場」の設計は 藤崎 真二

西日本新聞

 県産材の需要拡大を図ろうと福岡県が主催する木造・木質化建築賞の選考委員の一人として現地審査に同行した。訪ねた建築物は書類審査を通過した、木の温かみあふれる秀作ぞろい。ある公立校の校舎も感心して見ていたら、設計の専門家でもある選考委員たちが本音を漏らした。

 「でも、設計を競争入札で決めるなんてあり得ないですよ。設計によって建物は全く違う物になるのに」

 競争入札は一般的に、基準となる落札予定価格を設け最安値を提示した業者を選ぶ。この校舎も多くの公共施設と同様、この方式。これに対し専門家の皆さんが理想としたのは、提案内容を審査して選ぶプロポーザル方式だった。

 誤解されるといけないので言っておくが、この校舎の出来は、落ち着いた雰囲気や自然に包まれた感じが心地よく、図書室やホールなども工夫を凝らした「作品」とも言える素晴らしさだった。それでも設計重視の選考ならば、さらに「夢のある施設が期待できる」というわけだ。

 かつて取材に関わった福岡市立博多小を思い出した。

 都心空洞化に伴い旧4校を統廃合し、2001年に新校舎が完成した。伝統の「博多祇園山笠」がある校区だけに、統廃合を巡る住民の反対運動もあった。それも踏まえ「日本一の小学校」を合言葉に学校づくりが始まった。市は学校の設計で初めてプロポーザル方式を採用。地域との連携など運営も含めて公募、最も優れた案を採用した。

 その後どうなったか知りたくなり、先日、博多小を訪ねてみた。大通りの歩道から見学できる半地下の体育館は、住民に開放されていた。教室と廊下の間には壁がなく、各階の中央に位置する教員スペースにも壁はない。

 そんなオープンスペースは子ども同士が教室を超えて互いに気遣う場面も与えてくれるという。子ども2人が通学する40代の母親は「同じ階の上級生と下級生の仲が良く、担任以外の教員とも触れ合う機会が多いせいか、親近感も強い」と好意的だ。

 今なお海外を含めて視察が訪れる。児童数は統合時の約470人から現在は670人前後。本年度も教室が足らなくなり、改装して増やした。

 公費の使途は厳格さが求められて当然だ。でも、こんな事例を見ると、経済の視点だけではない公共施設の発注もありかと思える。「設計の入札が公共建築を駄目にしている。長い目で見ると大きな損失です」。専門家の意見を思い出しながら「夢のある学びの場」に考えを巡らせる。 (生活特報部長)


=2019/04/20付 西日本新聞朝刊=