細る町、留学生に希望 町営で日本語学校・就職支援へ奨学金 定住促し担い手に 北海道・東川町

西日本新聞

日本語のことわざを学ぶ留学生たち。3月に卒業し、多くの学生が日本での進学や就職を選んだ=3月、北海道東川町 拡大

日本語のことわざを学ぶ留学生たち。3月に卒業し、多くの学生が日本での進学や就職を選んだ=3月、北海道東川町

 外国人労働者の受け入れ拡大で多文化共生が課題となる中、官民一体で留学生を受け入れ、全国の注目を集める自治体がある。人口8千人の北海道東川町。町立の日本語学校を設立し、迎え入れた外国人を地域の担い手に育てる試みは多文化共生のモデルとなり、人口減少に悩む地方の活性化にも新たな方向性を示す。

 「三日坊主」「百聞は一見にしかず」。3月中旬。東川日本語学校の教室に、ことわざを音読する声が響いた。教師が意味を問うと、中国、韓国、インドネシアなどからの学生が手を挙げる。多くが日本での大学進学や就職を目指す。

 別の教室ではタイの中高生約20人が平仮名を練習していた。約1カ月間の短期留学で、プログラムには町内の名所見学や文化体験なども。高校1年のパトム・ヤニサさん(15)は「帰国後も日本語の勉強を続けたい」と笑った。

 2015年の設立以降、半年または1年の長期留学に訪れたのは計約230人。先駆けて09年に始めた短期留学では約2700人を受け入れた。「短期留学で町を気に入ってもらい、次は長期留学につなげたい」と増田善之事務局長。さらに町内の福祉専門学校へ進み、最終的には町で働いてもらうのが理想という。

   ◆    ◆

 隣に道内第2の都市・旭川市があるとはいえ、東川町は山あいの農村部。多くの留学生が集まる背景には、小さな町らしからぬ万全の受け入れ態勢がある。

 日本語学校は全国でも珍しい町の運営で、何より安心感がある。不法就労をしないよう学費や生活費の奨学金も充実させた。タイ、ベトナム、中国など海外に事務所を開き、誘致活動にも力を入れた。

 もともと福祉専門学校の学生減少への懸念から始めた事業という。「日本人学生を奪い合っても都会の学校には勝てない。若い人が増える仕組みをつくりたかった」と松岡市郎町長。広大な雪景色など自然環境もあって外国人に注目され、今では欠かせない人口減対策になった。

 関連予算は年間約4億円。8割は国の特別交付税で賄われる。生活費の補助は町内使用に限定したポイントカードで支給し、留学生事業の経済効果は約5億7千万円に上るという。

   ◆    ◆

 改正入管難民法の4月施行を踏まえ、新たな取り組みにも乗り出した。介護人材の育成だ。町は周辺自治体などと連携し、介護福祉士を目指す留学生への奨学金制度を創設。地域での就職を受給の条件とした。

 町内にある旭川福祉専門学校介護福祉科は今春、新入生に占める留学生の比率が初めて日本人を上回った。人手不足の介護事業者の期待は大きい。黒田英敏副校長は「留学生が増えても日本人向けの授業内容は変えず、質の高い人材を育てたい」と意気込む。

 増える外国人との共生はどう進めるのか。松岡町長は「住民との交流を増やすことに尽きる」と話す。

 町内では、地域の祭りも留学生に運営を担ってもらっている。あえて町の中心部に置いた日本語学校には、住民も利用するカフェやギャラリーを併設。住民の理解を得ながら留学生が日本語能力を伸ばし、地域に溶け込み、定着してもらえるよう工夫を重ねる。

 松岡町長は「大事なのは学びたい人の夢を支援し、人権を尊重し合うこと。外国人と日本人を区別する時代ではない」。北の大地で、小さな町の挑戦が続く。

=2019/04/21付 西日本新聞朝刊=