民放AM廃止 災害時に情報どう届ける

西日本新聞

 民間のAMラジオ放送が転機を迎えている。

 広告収入の落ち込みなどで、老朽化した送信用施設の更新が難しいという。民放連が、事業者の判断でAMを廃止しFM放送に転換できるよう総務省に制度改正を要請した。2028年までの対応を求めており、実現すれば、民間のAMラジオ局の多くがいずれFMに転換するとみられる。

 民放連によると、放送を中断せずにAMの送信用施設を更新するには、ヤフオクドーム程度の広大な用地を別に手当てしなければならない。AMラジオの営業収入はピーク時の4割以下の水準だ。今後も減少傾向が続く見通しで、事業を続けるにはコストを削るほかない。

 経営判断に口を挟むつもりはない。ただ、ラジオには災害時に必要な情報を届ける役目がある。停電時でも乾電池と受信機があれば放送が聴ける。車載ラジオもある。東日本大震災や熊本地震の際も、ラジオが多くの有益な情報や励ましの声を被災者に伝えた。FM転換で放送を聴けなくなったり、電波が届かない地域が生じたりするのは好ましくない。ローカル番組が充実している民放ラジオの将来像は、暮らしに寄り添うライフラインとしての役割を踏まえた議論が必要だろう。

 現実にはラジオの聴取方法は多様化している。インターネットを利用してスマートフォンやパソコンで聴く人も増えている。山間部や高層ビルが立ち並ぶ都市部での難聴対策として、AMラジオの番組を同時にFMラジオで流す補完放送(ワイドFM)を多くの放送局が行っている。雑音が少なくきれいな音声が楽しめると好評だそうだ。

 それでも課題はある。ワイドFMはテレビの地デジ化で空いた周波数帯を使っているため、対応した受信機でないと聴くことができない。三菱総合研究所のアンケートによると、家庭にあるラジオのうち、ワイドFM対応機器は5割程度で、AMの番組をFMで聴けると知っている人は約3割にとどまった。

 海外まで電波が届くAMに比べ、FM波の到達範囲は狭く、山陰にも回り込みにくい。ワイドFMに一本化されれば、九州の一部の離島や山間部では放送を聴けなくなる恐れがある。ラジオを頼りにし、楽しみにしている人を切り捨てるような切り替えは避けるべきだ。

 NEXCO西日本によると、高速道路のトンネル内では、ラジオが途切れないよう外部で受信した電波を再放送している。こうした対応も必要になる。

 南海トラフ巨大地震など、広域が被災する事態も念頭に民放ラジオの在り方を考えたい。

=2019/04/21付 西日本新聞朝刊=