“堅実”田上氏が長崎市長選制す 知名度生かし4選

西日本新聞

4選を確実とし、意気込みを語る田上富久氏 拡大

4選を確実とし、意気込みを語る田上富久氏

 変革期を迎える県都のリーダーに、長崎市民は田上富久氏を選んだ。午後8時半ごろ、テレビで当選確実が伝えられると、事務所に姿を現した田上氏は「次代に向けて時間をかけて進めてきた政策を、次の4年間で形にしていきたい」と意気込みを語った。

 田上氏は労働団体の連合長崎や自治会など400超の団体の推薦を得るなど盤石の態勢を整えた。ただ、昨春に選挙実務の担当者が対立候補に移り、陣営幹部は「選挙のプロがおらず苦労した」と言う。選挙期間中、推薦企業を回るのに加えて、選挙カーを降りて商店街などを練り歩く作戦を展開。知名度の高さを十分に生かし、市民と直接触れ合うことで支持層の拡大を図った。

 JR長崎駅西側の大型コンベンション(MICE)複合施設や、公会堂跡地の新市庁舎など市が進める大型事業について対立候補の批判を浴びたが、田上氏は街頭演説や個人集会で「50年、100年後を見据えた事業」と繰り返し、意義を説明することでかわした。

 無所属新人の橋本剛氏(49)は「長崎を変える」をスローガンに、自身をカエルに見立てたポスターを市中心部に張り、若さや「刷新」のイメージを強調。住民投票条例制定を求める直接請求を計5度起こされたことに触れて「市民のための政治を取り戻す」と訴えた。地盤の中心市街地では支持を固めたが、広がりを欠いた。事務所で報道陣に「市政の現状に危機感を持つ人たちと共鳴できたことはよかった」と敗戦の弁を述べた。

 いずれも無所属新人の元県議高比良元氏(66)は豊富な行政経験をアピール、元市議の吉富博久氏(74)は子育てや医療の充実を訴えたが、及ばなかった。当日有権者数は35万395人。

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■地域の声拾い反映を

 【解説】長崎半島と西彼杵半島の一部を含む長崎市は、北端から南端まで車で2時間半を要する。海岸線近くまで山が迫るため平地が少なく、複雑な入り江がインフラ整備を困難にする。造船を中心とする製造業の低迷で雇用は縮小。転出超過は全国ワーストで進み、合併した旧町からの流出が著しい。

 7日間の選挙中、各候補はそれぞれに振興策を訴えた。市中心部で進むMICEへの賛否は割れたが、民間活力を推進力とし、旧町との往来の利便性を向上させ、各地域の魅力を引き出す、という点では一致した。

 それでも旧町は「衰退」を懸念する。「100年に1度」と言われる再開発が進む中心部と対照的に、変化から取り残される地域の不安や不満は小さくない。リーダーは選挙後も地域の声を吸い上げ、政策に反映させる努力を続けなくてはならない。

=2019/04/22付 西日本新聞朝刊=