統一選を終えて 「地方の危機」打開へ動け

西日本新聞

 想像を絶する規模と速度で「地方自治の危機」は深刻化している。厳しい九州の現実を突き付ける平成最後の大型地方選だった。

 第19回統一地方選がきのう、閉幕した。1カ月に及ぶ一連の選挙戦で改めて浮き彫りになったのは、人口減少を背景とした地方自治の担い手不足である。

 民意の審判を受けない大量の無投票当選はその象徴だ。有権者の関心度を示す投票率の低下傾向にも歯止めはかからなかった。

 地方自治とそれを支える選挙制度の根幹が揺らいでいる。

 ●「負の連鎖」断ち切れ

 「無投票 323万票宙に浮く」 九州7県議選の告示を報じた先月30日付本紙朝刊の見出しだ。九州7県(計146選挙区)では計68選挙区が無投票となり、総定数353の31・7%に当たる過去最多の112人が告示日に当選を決めた。本来なら行使できた有権者の1票を積み重ねると、323万票に及ぶという意味である。

 議員のなり手不足は全国的な傾向だ。41道府県議選で無投票当選者の比率は26・9%だった。全国平均が4人に1人の割合なのに対し九州は3人に1人と高い。

 無投票は首長選でも相次ぐ。全国の市長選では県庁所在地の津や高松で無投票となり、九州では大分県別府市が戦後初の無投票になった。九州の23町村長選では4割を超す10町村が無投票だった。さらに熊本県津奈木町議選は定数10に対して立候補者は9人で、異例の定数割れとなってしまった。

 選挙で選ばれない首長や議員の増加は何をもたらすか。地方自治は、有権者が直接選挙で首長と議会を別々に選ぶ二元代表制だ。「車の両輪」に例えられる両者が民意を代表して相互に抑制し均衡を図る。そのどちらか、極端な場合は両方が選挙を経ず民意が反映されていないとすれば、両輪のバランスは崩れ、地方行政の運営や監視は機能不全に陥りかねない。

 投票率も総じて下げ止まらない。無投票の増加と呼応するかのように、九州の7県議選を含む41道府県議選の平均投票率は44・02%と過去最低を更新した。人口減少→担い手不足→無投票の増加→投票率の低下→空洞化の進行-と連なる「負のスパイラル」を断ち切るにはどうすればいいのか。

 「光明」を見いだすとすれば、女性の増加だ。今回の統一選は議員選で男女の候補者数を均等にするよう政党に求める「政治分野の男女共同参画推進法」が施行されて迎える初の大型地方選だった。

 その結果、九州の女性候補は7県議選で過去最多の計44人が立候補し、全体の9・6%だった。福岡市議選は前回から倍増の19人が出馬して約2割を占めた。

 「均等」には遠く及ばないが、女性候補・議員の増加は地方選挙・議会への新風である。出産・子育てとの両立支援など周囲の理解で、女性が地方政界へ進出しやすい環境をもっと整えていきたい。

 地方議員の待遇改善にも取り組む必要がある。議員報酬の引き上げだけではない。自治体と請負関係にある団体・企業の役員などが議員を兼業することを禁じる地方自治法の規定を巡り、条例で兼業の範囲を明確化して立候補できる条件を整備する動きもある。

 総務省の研究会が昨年提言した小規模自治体の議会改革案の一つは、兼業議員を中心とする議会だった。休日や夜間に開く議会、会期を定めない通年議会など、前例にとらわれない「新しい議会」を早急に検討し、実現すべきだ。

 ●問われる資格と力量

 大切なのは議会がその存在意義を住民に正しく理解してもらうことである。議会の本質が健全で活発な議論にあることは言うまでもあるまい。ところが、である。

 本紙の九州全自治体(7県と233市町村)議会アンケートによれば、前回統一選の2015年度以降、首長提出の議案を一度も修正・否決しなかった「丸のみ」議会は半数近い115議会に上った。議員提案で独自の政策条例を制定したのは1割の26議会にすぎない。「もの申さぬ」議会が多過ぎる。これでも「二元代表」の一翼と言えるか-と問い直したい。

 この統一選の最中にも、日本の総人口は8年連続で減少し、70歳以上の割合が初めて全体の2割を超えたという人口推計(昨年10月1日時点)を総務省が発表した。「地方創生」という政府の掛け声とは裏腹に、人口減少と東京一極集中は加速するばかりである。

 地方の衰退を食い止める主体はあくまで地方だ。その重責を担う資格と力量を備えているのか。

 英知を結集して私たちの地方自治を再起動させねばならない。

=2019/04/22付 西日本新聞朝刊=