【多文化共生に新時代】 関根 千佳さん

西日本新聞

関根千佳(せきね・ちか)さん=ユーディット会長同志社大客員教授 拡大

関根千佳(せきね・ちか)さん=ユーディット会長同志社大客員教授

◆日本語学習の拡充図れ

 今月から外国人受け入れの制度が変わった。福岡市内のコンビニや店舗で、ネパールやベトナムの方を見かけることは普通になったが、今後、より多くの外国人が日本にやってくることになる。私はこの流れに賛成である。その上で諸課題に向き合いたい。

 「日本に来たい」という外国の方が増え、共に暮らすことは、日本の子どもたちを国際人に育てる上でも重要なことだ。私は長崎県佐世保市に生まれ育ったので、外国籍の同級生も多かった。肌の色も文化も実に多様で、「みんな違って、みんないい」と子どものころから知っていた。クリスマスには家々の飾りつけに見とれた。タコスもピザも、50年前から普通の食べ物だった!

 私はハーフという言い方が好きではない。二つの文化の間に橋を架けているのだから、二倍の価値があると思う。また、留学生も技能実習生も、どんどん日本に来て、日本を好きになってほしい。そのためには、受け入れ態勢が重要だ。

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 30年ほど前、連れ合いの転勤でロサンゼルスに引っ越した私は、ほとんど英語が話せなかった。隣人が、「ここで暮らすなら、まず英語ね」と、近所のESL(第2言語としての英語)のクラスを紹介してくれた。夜、小学校で開講される授業は無料で、全米に普通に存在していた。先生は現役の教師で、ガードマンは地域の高齢者だった。

 言語だけでなく、コインの見分け方や小切手の使い方、町の歴史や地理も教えてくれた。少し話せるようになった3カ月後、そのクラスが市立大学を紹介してくれた。ここでも私のような転勤族や移住者、移民とその家族が学んでいた。このような学びの場が、無料もしくは格安で提供され、私も1年ほどで生活には困らなくなっていった。「このお肉をスキヤキスライスにして!」くらいは肉屋で依頼できるようになったのだ。ありがたかった。

 日本では、日本語学習の場が少ない。外国にルーツを持ち日本語指導が必要な約4万4千人の子どもの中で、約1万人が十分な教育を受けていないという。ESLと同様のJSL(第2言語としての日本語)のクラスは足りず、共通の教材も不十分なまま各自治体にまかされている。教育を受ける権利が外国籍の子どもには保障されているとは言い難い。外国籍の子どもの高校進学率は約8割で日本人に比べ2割程度低い。日本語力が影響しているのだろう。

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 総務省は2005年に「多文化共生の推進に関する研究会」を設置し、翌年、地方自治体における「多文化共生の推進に関する報告書」をまとめた。

 私も委員の一人としてユニバーサルな社会へ向けた政策を提言したが、「コミュニケーション支援」は重要な柱であった。日本にやってきた人が、「この国に暮らして良かった」と思えるためには、まず言語や文化の習得が前提で、それを支える社会との多様な関わりが重要なのだ。

 滋賀県では、外国ルーツの高校生が、職場訪問をして先輩から話を聞き、共に未来を話し合うというキャリア教育が行われている。地元の菓子メーカーなども協力して、この地域で働くということを理解してもらうのだ。その結果、日本語習得への意欲向上につながり、企業側の理解が深まるなど、学びの良い循環が生まれているという。

 九州でも、今後、より多くの外国人が学び、働きに来るだろう。この人々が、九州で過ごす日々を人生の最良の時間と思え、できれば定住したいと思えるように、市民社会の中での受け入れ態勢を整えていきたいものである。

 【略歴】1957年、長崎県佐世保市生まれ。九州大法学部卒。81年、日本IBMに入社。ユニバーサルデザインの重要性を感じ、98年に(株)ユーディット設立。同社社長、同志社大教授など歴任。著書に「ユニバーサルデザインのちから」など。

=2019/04/22付 西日本新聞朝刊=

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