スリランカテロ 背景探り封じ込めを急げ

西日本新聞

 爆発現場で天を仰ぎ「内戦の時でもこんなことはなかった」と嘆く住民の姿が痛々しい。

 スリランカの最大都市コロンボとその周辺で21日、教会や高級ホテルを狙った連続爆破テロが発生した。死者は300人を超え、負傷者も約500人に上る。死者には日本人女性1人も含まれている。南アジアでは最悪規模のテロだという。

 罪のない市民を襲って社会の動揺を狙うテロは、決して許されない卑劣な行為だ。一刻も早い事件の全容解明と、法に基づく加害者の処罰が望まれる。
 スリランカでは、国民の約7割をシンハラ人中心の仏教徒が占める。タミル人が多いヒンズー教徒が1割強で、ほかイスラム教徒が1割、キリスト教徒が1割弱という構成比だ。

 1980年代からシンハラ人主体の政府軍と、タミル人武装組織との間で内戦が勃発(ぼっぱつ)し、2009年の終結までに国連推計で8万~10万人が死亡した。内戦終結後は国内の治安は大幅に改善し、国民のテロへの警戒感も薄れていたようだ。

 今回の事件は教会とホテルを狙っており、テロ組織がキリスト教徒や外国人を標的にした可能性が高い。これまでの内戦の対立構図とは違って見える。
 スリランカ当局は事件に関与したとして、これまでに数十人を拘束した。政府報道官は、同国内のイスラム過激派「ナショナル・タウヒード・ジャマア(NTJ)」が関与した可能性を指摘している。

 ただ、NTJはそれほど大きな組織ではなく、周到に計画されたテロを単独で実行する能力があるか疑わしい。「イスラム国」(IS)など国際的なイスラム過激派組織からの支援や指導があったかどうかが、今後の捜査の焦点となりそうだ。

 ISはシリアやイラクでは米軍の掃討作戦などで支配地を失ったが、一方で活路を求め南アジアへの浸透を図っているとの見方がある。また、スリランカ人が国外でISに参加し、過激思想に感化されて帰国している可能性も捨てきれない。

 気になるのは、スリランカ当局が事前に、今回のテロ情報の一端をつかんでいたと指摘されていることだ。なぜこの重要情報が生かされなかったのか。徹底的に検証してほしい。

 同時に、今後の捜査が同国内の複雑な宗教対立をあおり、さらなる混乱を招かぬよう、細心の注意が求められる。

 日本では来年、東京五輪・パラリンピックが予定されている。過激派組織の侵入を水際でどうくい止めるか。過激思想の国際的な拡散をいかに封じ込めるか。各国関係機関と情報を共有し、ぬかりなく備えたい。

=2019/04/24付 西日本新聞朝刊=