「世界のどこにもない貴重なものがある」…

西日本新聞

 「世界のどこにもない貴重なものがある」。アジアを旅したマルコ・ポーロは、中国からの帰りに立ち寄った島について「東方見聞録」にこう記した。見たこともない大きさのルビーやサファイア、黄玉、紫水晶…

▼インド洋に浮かぶこの島国の名は「スリランカ」。現地の言葉で「光り輝く島」という意味だ。自然豊かで、世界に名だたる宝石の産地にふさわしい。旧国名「セイロン」に、芳醇(ほうじゅん)な紅茶の香りを思い起こす人もいよう

▼植民地時代を経て、第2次大戦後、独立した。敗戦国の日本が主権を回復したサンフランシスコ講和会議で、セイロン代表は「憎悪は憎悪によってやむことはなく、愛によってやむ」という仏教の教えを引き、日本に対する損害賠償を放棄した

▼国民は仏教徒が多いシンハラ人が約7割。残りはタミル人中心のヒンズー教徒やイスラム教徒、キリスト教徒だ。右の代表の言葉は、多民族国家が目指した理想のようにも思える

▼シンハラ人とタミル人による内戦が10年前に終結し、平和が訪れた。日本からの旅行客も多い。その島で起きた同時多発テロ。300人以上が亡くなった。犠牲者には日本人の女性も

▼イスラム過激派の関与が疑われている。背景ははっきりしないが、民族や宗教間の争いを過熱させてはならない。「憎悪は憎悪によってやむことはない」。宝石の輝きにも負けない貴重な教えを、今こそ思い起こしたい。

=2019/04/24付 西日本新聞朝刊=