漫画アクションの時代 塩田 芳久

西日本新聞

 漫画家モンキー・パンチさんの追悼記事を読んでいると、代表作「ルパン三世」は、テレビと映画のイメージで語られていると感じた。青年誌「週刊漫画アクション」の創刊(1967年8月10日号)時から連載されたオリジナルの「ルパン三世」に触れた記事はないか、と探していたら、漫画原作者小池一夫さんの訃報が飛び込んできた。小島剛夕さんと組んだ「子連れ狼」は、ルパンとともにアクションの看板作品であったことを思い出した。

 両作ともリアルタイムの読者ではない。ルパンはテレビ番組、子連れ狼は「3分間待つのだぞ」のCMだった。後に単行本で読んだ時、子連れ狼の拝一刀はもとより、ルパンの暗く虚無的な造形に驚いた。冷徹な性格、性暴力も殺人もいとわない。「一殺五百両」の報酬で動いた拝と通じるものを感じた。当時のアクションは、大学紛争などもあり「暴力」が身近にあった時代を映していたのだろう。

 福岡出身の私にとって、アクションは長谷川法世さんの「博多っ子純情」が載った雑誌だった。矢作俊彦さんと大友克洋さんの「気分はもう戦争」の評判は福岡にも伝わっていた。大学進学で上京した頃、一番読んだ雑誌でもあった。はるき悦巳さんの「じゃりン子チエ」、いしいひさいちさんの4こま漫画、関川夏央さんのコラムも愛読した。

 「ビッグコミック」などライバル誌と比べ、あか抜けてなく土くさいと東京の友人は言っていた。地方出身者には、そこがよかった。はるきさんは大阪市、いしいさんは岡山県玉野市、関川さんは新潟県長岡市の出身。「田舎んもん」が圧倒される東京の若者文化だが、実は地方出身者が支えていると教えてくれた。

 そういえば、モンキー・パンチさんは北海道浜中町、小池さんは秋田県大曲町(現大仙市)の出身だ。漫画に限らず、若者が上京して苦労を重ね成功を手にするストーリーは一定の支持を得ていた。アクション自体、そのストーリーを内包した東京発のローカル文化の象徴と映った。

 今、都会VS地方の議論は古いし、上京は成功への通過儀礼ではなくなった。暴力表現は遠ざけられ、ルパンは優しく機知に富んだ義賊のイメージが定着した。そんな時代にアクションはどんな作品を載せているのか?

 久しぶりに最新の5月7日号を買って驚いた。「気分はもう戦争」の続編が載っていたのだ。古い読者への迎合か、変わらない雑誌づくりの主張なのか。後者だと信じ、「あの時代」を求めてページをめくった。 (編集委員)

=2019/04/24付 西日本新聞朝刊=