基山町の牧場に「エミュー」視察相次ぐ 「6次産業化」県内外から関心

西日本新聞

森林に囲まれた牧場で飼育されているエミュー 拡大

森林に囲まれた牧場で飼育されているエミュー

日本エコシステム飼育担当の福本純一さん(左)とともに餌やりを体験。エミューはすぐに集まってきた キーマカレー、健康オイル、石けんなど、エミュー関連商品の開発が進む

 動物園でおなじみの大型の鳥「エミュー」。主な生息地はオーストラリアだが、福岡県境の基山町の牧場に350羽が暮らす。そこに県内外の自治体や民間業者の視察が相次いでいるという。九州自動車道上り線の基山パーキングエリア(PA)から西に歩いて5分。福岡県筑紫野市の市街地に近い森林の奥に入った。

 「ようこそ!エミュー」と白いペンキで書かれた木製看板。もともとクリ畑だったという牧場の入り口付近に立つ。

 ボンボンボン…。太鼓を打つような低い音。これがエミューの鳴き声だ。高さ3メートルほどの柵の向こうに、数え切れないほどのエミューがいた。ダチョウに比べれば、やや小柄とはいえ、その高さは1メートル40センチ前後。

 「体は大きいが、温厚で、人なつっこいよ」。牧場を管理する節電機器レンタル会社「日本エコシステム」(同市)の飼育担当の福本純一さん(64)が教えてくれた。

 餌はトウモロコシのほか、町内農家からもらった青野菜。牧場の雑草も食べ尽くす。ただ、フンのにおいはしない。鶏などに比べて餌を消化する力が強いためだという。

 餌やり体験ができるということで、キャベツを差し出すと数羽が元気よくかぶりついてきた。歯がないため、かまれても痛くない。「胴体をゆっくり地面に押すと座ります」と福本さん。初心者には難しそうだと半信半疑で試すと、いとも簡単にその場に座った。「エミューをペットとして飼える日が来るかも」と感じた。

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 ただ、実は、このエミュー、オーストラリアでは食用肉や薬にするために捕獲されている。

 この地に日本エコシステムが2014年11月に牧場を設けたのも、生産から加工、販売まで手掛ける「エミューの6次産業化」を目指したものだ。

 同社がエミューを飼育し、町内の農業生産法人「きやまファーム」に販売。同法人が町設置のジビエ加工場で食肉とし、ハムやハンバーグ、レトルトカレーなどの商品にする。基山PAで売り出され、町内の飲食店ではエミュー肉を使った料理も提供する。

 町もエミューの加工品を特産品とし、地域活性化につなげようと事業を後押しする。久留米大(福岡県久留米市)と協力し、エミューの皮下脂肪を使った健康オイルの開発を18年12月にスタート。20年春ごろの商品化を目指している。

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 この牧場の視察依頼は、他自治体から町を通して依頼されたものだけで毎月1件以上。「牧場に直接依頼したものや、民間からの依頼を含めると数え切れない」(町担当者)。ただ、これは「6次産業化」そのものへの関心だけでない。

 基山町内の中山間地では田畑を荒らすイノシシ被害が後を絶たなかった。しかし、エミューの放牧以来、近辺でのイノシシ被害が激減したという。「動物の気配を感じてイノシシが山から下りてこなくなったでは」(牧場関係者)との見方もあるが、理由は不明だ。

 県内外の自治体は耕作放棄地の活用やイノシシ被害の対策として注目。今月16日には唐津市の離島の区長ら約20人が視察に訪れた。「エミューは潮風に耐えられるのか」「飼育方法が分からない。専門のスタッフを島に常駐させてほしい」。飼育担当者に次々と質問を浴びせた。

 高島(唐津市)に住む野崎力さん(66)は「ここ10年、島民の高齢化で田畑が放置され、イノシシ被害が増えている。エミューの飼育は解決策の一つになるかも」と期待を込める。

 エミューは地方創生の救世主となるのか。町産業振興課の寺崎一生課長は「面白い取り組みで、町としても全力で後押ししたい」と話す。

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 餌やり体験は4~10月(11~3月は柵の外からの見学)で無料。事前申し込みが必要で、日本エコシステム=092(923)4233。

=2019/04/25付 西日本新聞朝刊=

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