死産のわが子しのぶ「花の宝石」 油症患者が丹精込め育て、3年ぶり満開 地域の人気スポットに

西日本新聞

満開に咲いたリビングストンデージーを見守る永尾トシ子さん=13日 拡大

満開に咲いたリビングストンデージーを見守る永尾トシ子さん=13日

 五島市玉之浦町の県道沿いにある永尾トシ子さん(80)の畑で今春、「花の宝石」と呼ばれるリビングストンデージーが3年ぶりに満開になり、住民やドライバーの目を楽しませた。永尾さんはカネミ油症で体調を崩し、死産も体験したつらい過去がある。生まれることができなかったわが子をしのびながら25年間育てた花の絨毯は地域の人気スポットとなった。

 永尾さんがリビングストンデージーを育て始めたのは、親戚の畑に咲いていたものを見たのがきっかけ。「鮮やかな美しさに一目ぼれ」し、30本の苗をもらった。イモを作っていた約500平方メートルの畑に苗を植え替え、徐々に数を増やしていった。

 南アフリカ原産の一年草。花を咲かせるには毎年植え替える必要がある。永尾さんは毎年1人で畑を耕し、肥料やりや草取りに精を出す。そうして秋に出た種が、春に花を咲かせる。

 51年前、内臓を悪くするなど身体に異変が起きた。当時、五島で流通していたカネミ倉庫(北九州市)製の食用油が原因だった。翌年患者に認定され、3年後には死産を経験。「油症が影響したのではないか」。悩み続け、悔しさと不安を長く感じ続けてきた。

 元気を出して-。励ましてくれたのがリビングストンデージーだった。「花の世話は子育てのようで、不思議と心が落ち着きました。重労働ですが天国の子どもが見守ってくれているような気もします」

 今春、満開となった花の種は油症発覚50年の昨年に収穫した。写真撮影を楽しむ見物客を眺め、永尾さんは「自分を育ててくれた地域への恩返しにもなっている」と感じるようになった。花は人々の心にピンクの彩りを添えた後に静かに散り、新しい種をつける準備に入った。

=2019/04/25付 西日本新聞朝刊=