亡夫想い91歳が歌文集 築上町の梶屋邦子さんが自費出版

西日本新聞 北九州版

歌文集「彼岸花の賦」を出版した梶屋邦子さん(左)と長男の伸一さん 拡大

歌文集「彼岸花の賦」を出版した梶屋邦子さん(左)と長男の伸一さん

 築上町本庄の梶屋邦子さん(91)が自らの歩みをつづった歌文集「彼岸花の賦(ふ)」を自費出版した。これまでに詠んだ短歌のうち200首ほどと自分史をまとめたもので、亡くなった夫への愛情や、家族への思いなどがひしひしと伝わる一冊となっている。

 梶屋さんは本庄生まれ。教諭だった父親の転勤で長崎市などに移り住んだ後、生家に戻った。旧制椎田高等女学校(築上町)を経て、旧制長崎高等女学校(長崎市)に編入した。卒業後は地元に帰り、小学教諭の夫と出会い、結婚。農業を継ぎ、4人の息子を育て上げた。

 50歳の時、夫をがんで亡くし、孤独感から無気力になったものの、長男に勧められ51歳で自動車運転免許を取得。前向きに農業や会社勤めができたという。同居した三男ががんで亡くなり、88歳の時には四男が急死した。悲しい出来事もあったが、自ら二十数年前に作詞した、地元のシンボルで国指定天然記念物「本庄の大楠」をたたえる歌「本庄大楠」の歌碑を昨年、大楠の近くに自費で建立するなど前向きに生きている姿が描かれている。

 「その昔ポストにしたる石垣に彼岸花を挿して君を想(おも)ほゆ」

 結婚する前、夫との手紙のやりとりに郵便ポスト代わりに使っていた石垣。毎年、夫とめでた彼岸花を挿した様子が目に浮かぶ。

 「入院の日に十円玉詰めし小銭入れのふくれしままに夫は帰らず」

 夫が入院した際、電話をかけるのに小銭が要るだろうと10円玉をいっぱい詰めて渡したが、息を引き取った後、そのまま小銭入れが帰ってきたことを思い出し、亡き夫に想いを寄せた。

 「喜寿祝だと玄関前の松の下(もと)に息子四人が据えし石灯籠(どうろう)」

 元気だった4人の息子が喜寿の記念に石灯籠を据え付けてくれたことに感謝を込めて詠んだ。

 本には収録されていないが、先だった四男への思いを詠んだ短歌が梶屋さんは忘れられないという。

 「継ぎ当てズボンをファッションと笑い合いまたねと行きし子は帰りきぬ」

 梶屋さんは「その時々の思いをメモ用紙などに書いた短歌。本にはならないと思っていた」と謙遜する。長男の伸一さん(69)=小倉北区=は「多くの短歌は夫(父親)のことを詠んでいる。優しさ、愛情が伝わってくる本で、夫婦生活の参考になる。ぜひ読んでほしい」と話した。

 A5判125ページで、東京混声合唱団が歌う「本庄大楠」のCD付。築上町椎田の町図書館で読むことができる。

=2019/04/25付 西日本新聞朝刊=