消えぬ傷に見合わぬ賠償 強制不妊救済法 熊本訴訟の原告ら憤り

西日本新聞

救済法について「あまりにも人間をばかにした法律だ」と語気を強める熊本県の渡辺数美さん=24日午後5時すぎ、熊本市 拡大

救済法について「あまりにも人間をばかにした法律だ」と語気を強める熊本県の渡辺数美さん=24日午後5時すぎ、熊本市

 長く放置された被害の回復への「一歩」となる日であったとしても、被害者の表情が晴れることはなかった。「被害の回復どころか侮辱だ」-。旧優生保護法下で不妊手術を強いられた障害者らに対する救済法が24日、成立。しかし「国による謝罪」は明記されず、旧法を巡る国家賠償請求訴訟の原告らからは厳しい声が相次いだ。被害者の闘いは、なお続く。

 熊本地裁に国家賠償請求訴訟を起こした渡辺数美さん(74)=熊本県=は同日、熊本市内で会見し、救済法の内容を批判した。

 「国なのか国会議員なのか分からん。責任逃れに聞こえる」。渡辺さんは、救済法で不妊手術の被害者への「反省とおわび」の主体が「われわれ」とされたことを問題視。安倍晋三首相が政府として謝罪する談話を出したことも「遅きに失した」と切り捨てた。

 幼少期に変形性関節症を患った渡辺さん。10~11歳の頃、県内の病院で同意なく両睾丸(こうがん)を摘出された。旧法による不妊手術だったと母に聞かされたのは15歳の時。子どもをつくれないと悲観し、結婚も諦めた。

 訴訟では、睾丸摘出に伴いホルモンバランスが崩れ骨の強度が低下したため両肩に人工関節が必要になるなどの損害を受けたとして国に3300万円の賠償を求めた。救済法による一時金は、その10分の1。「治療費だけで500万円以上かかっている。320万円でチャラにしてくれなんて冒涜(ぼうとく)だ」と語気を強めた。

 自身に障害はないが、第1子に障害があったことなどから医師の勧めで手術を受けたとして1月に提訴した県内の女性(72)も「優生手術によって受けてきた苦しみがその程度のものということなのでしょうか。馬鹿にされているように感じる。国に責任があることについても曖昧にされている」とのコメントを出した。

 会見に同席した熊本訴訟弁護団長の東俊裕弁護士はこう強調した。「今回の法律が根本的な解決をもたらすことはあり得ない。引き続き司法による適正な救済を目指し、全力で取り組む」

=2019/04/25付 西日本新聞朝刊=

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