強制不妊救済法 「尊厳回復」への第一歩だ

西日本新聞

 旧優生保護法(1948~96年)により、不妊手術を強制された障害者らを救済する法案が参院本会議で可決された。法成立と同時に、安倍晋三首相が政府としての「反省とおわび」の談話を発表した。

 旧法から障害者差別に該当する部分が削除され、母体保護法に改正されてから23年がたつ。不妊手術は少なくとも2万5千人に施された。遅きに失したとはいえ、ようやく法の光が当たったことは評価できる。

 ただ、内容は不十分だ。被害者の尊厳回復へ向けた第一歩にすぎないことを確認しなければならない。

 法案は、旧法が議員立法だった経緯から与野党議員が合意の上、今国会に提出した。成立した救済法は前文に、被害者に対し「われわれは、それぞれの立場において、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」と明記した。「われわれ」とは旧法を制定した国会、執行した政府を特に念頭に置いているという。

 首相談話は「政府としても、旧法を執行していた立場から、真摯に反省し、心から深くおわび申し上げます」としている。被害者らが明確化を求める国の法的責任には触れておらず、救済法の前文をなぞった内容だ。

 被害者に支給する一時金は320万円で、ここでも被害者側の要求とは大きな隔たりがある。熊本地裁など各地で起こされた国家賠償訴訟の請求額は最大で3千万円台後半だ。

 旧法は元々、食と住が不足する戦後の劣悪な環境下、中絶を一部認め母体を保護する狙いがあった。同時に優生思想に基づき障害者を「不良な子孫」と規定し、不妊手術を合法化した。

 問題は、つい二十数年前まで、日本社会がその誤りに気付かなかったことである。70年代には、兵庫県庁などが「不幸な子どもの生まれない対策室」を設置し、「異常児」の出産減を公然と推奨した。現在から見れば驚くべき名称と施策である。

 激しい異議を唱え、方針転換させたのは障害者団体だった。彼らは当時既に、健常者と同じように生きる権利を主張していた。それが旧法改正に結び付くまでに長い時間が費やされた。

 そうした問題意識を持てずに人権侵害を見過ごす形となった私たち報道メディアをはじめ、強制手術を励行した医療機関など各種団体にも「真摯な反省」は当然、求められている。

 来月には被害女性が初めて起こした国賠訴訟の判決が仙台地裁で言い渡される。優生政策を遂行した国の責任と旧法の違憲性が焦点だ。結果によっては成立したばかりの救済法も見直しを迫られる。議論を続け、被害者が納得する制度に高めたい。

=2019/04/25付 西日本新聞朝刊=

PR

アクセスランキング

PR

注目のテーマ