「24時間営業」必要ですか?

西日本新聞

 大阪府のコンビニオーナーが過酷な労働実態を訴えたことがきっかけとなり、24時間営業の必要性について議論が起こりました。コンビニや飲食店など、24時間開いている利便性は当たり前のもの? 消費者として、働く側として「便利な生活」について考えました。

■人手不足で閉店、高齢者困る

 自営業男性(65)=福岡県筑紫野市 自分が持つ土地に建物を造り、そこをコンビニに貸している。夜は客が少ないし、中高校生のたまり場になったことも。これまでの店長の中には妻、子どもと一緒に切り盛りしていたが、子どもが勤務できなくなり、店を続けられなくなった人もいた。コンビニ以外買い物する所がなく、困っているお年寄りもいる。コンビニは、高齢者の買い物を助けるようなサービスに力を入れるべきではないか。

 女性(68)=福岡市西区 昨今は夜型人間が多いので24時間営業を必要とする意見も多いと思うが、私みたいに早寝早起きタイプにとっては午前6時~午後11時で十分だ。

■防犯に必要、地域に合わせて

 女子大学生(20)=長崎市 コンビニは夜も働く人がいる限り24時間営業を続けてほしい。暗い場所では防犯上も助かる。経済的な事情から、時給の高い深夜のコンビニバイトがあって助かっている学生や留学生も少なくない。

 以前、24時間営業の牛丼店でアルバイトしていたが、ワンオペ(1人勤務態勢)で重い米を運んだりして腰を痛めて辞めた。深夜や未明のお客さんは、主に飲食店勤めの人や出勤前の建設作業員。でも1時間に2人しか来ないときもあり、効率は悪かった。食べ物はコンビニで手に入るので、飲食店が24時間開ける必要はないのでは。

 タクシー運転手男性(55)=福岡県福津市 勤めるタクシー会社でも、交代で常に誰かが勤務している。夜は仕事や飲み会帰りの客などのニーズがあるので基本的に24時間営業は必要だと思う。熊本地震の際は、深夜に警察官や鉄道会社などの関係者を多く乗せた。ただ、小売業や外食業も含めて一律で決めるのではなく、地域の状況を考慮して柔軟に対応していいのでは。

働き方改革を進める好機

 男性会社員(50)=北九州市小倉北区 かつて長距離トラックの運転手をしていた。夜中に運転しながら食べられるものといえばおにぎりやパンなので、コンビニのおかげで助かっていた。事故防止のために細かく休憩が決められていて、コンビニの駐車場を使うことも多かった。24時間営業がなくなると深夜に働く人にとっては不便になると思う。

 一方、深夜や未明に営業していることで、その時間帯に配送の必要性が生じ、長時間労働の原因の一つにもなっている。24時間営業の見直しは、運送業の働き方改革を進めるチャンスにもなるのではないか。

 コンビニオーナー男性(36)=福岡市中央区 両親と社員、アルバイトの計18人で回している。私の休みは辛うじて週1回。従業員に休みを取らせようという本部の指示もあり、その分を私や親が補っている。深夜営業の時給は千円以上で、人件費が利益を圧迫している。売上高の約6割は本部へロイヤルティーとして支払うので、利益を出すのが大変だ。

 福岡市内でも人口が少ない地域では、午後11時に閉店するなどの対策を取り始めている。私の店はピーク時に比べ、深夜の来客数が2割ほど減ったが、繁華街に近いので、店を閉めるわけにはいかない。

 

外食産業で進む時短営業

 全国に5万5000店以上あるコンビニ。セブン-イレブンが1975年に福島県の店舗で24時間営業を始め、他社も追随し、各地に浸透していった。

 今年に入りオーナーの訴えが社会問題となったことで、24時間営業にこだわってきたコンビニ業界も時短営業の実験を進めるなど、見直しに取り組まざるを得なくなった。国がオーナー側を保護しようとする動きもある。公正取引委員会は、オーナーの営業時間短縮の要望を本部が一方的に拒否する場合などに、独占禁止法上の「優越的地位の乱用」を適用する検討をしている。

 営業時間の短縮は外食産業で先行しており「ロイヤルホスト」は2017年1月までに24時間営業を全てやめた。「ガスト」は09年に3割ほどを占めた24時間営業の店が18年は1割以下だ。ガストの担当者は、従業員の労働環境の改善だけでなく、日中の利用が多いシニア層が増えたことも理由と言う。

 人手不足や消費動向の変化を背景に今後も営業時間短縮の動きは加速しそうだ。

 

消費者も意識改革を 西南学院大法学部教授(労働法)有田謙司さん

 何げなく24時間営業の恩恵を受けてきた人も多いと思いますが、その時間に働いてくれる人がいるからこそです。消費者も意識を変える時に来ています。

 特に働き手の確保が難しいのが深夜帯。午後10時~午前5時に働いた場合、深夜手当の割増率は25%以上と労働基準法で定められていますが、労働の対価として不十分ではないでしょうか。深夜に働くことは、体に負担になるだけでなく、日中に寝るので地域や学校行事への参加が難しいなど、社会生活にも影響を及ぼします。深夜の時間帯はさまざまなものを販売する自動販売機でコンビニの機能を補うのも有効です。

 消費者として、夜中に買ったり食べたりする必要性がどれぐらいあるでしょうか。残業の問題とも無関係ではありません。働く人がいるから、飲食店やコンビニ、タクシーなどで深夜営業のニーズが生じます。各企業が働き方改革に力を入れ、時間外労働の見直しが進めば、24時間営業をする必要性も少なくなります。

 

もう限界、営業時間の選択肢を コンビニ加盟店ユニオン執行委員長・酒井孝典さん

 コンビニの多くは、オーナー個人が本部とフランチャイズ契約を結び、運営されています。売上高から原価を除いた粗利益の4~6割程度をロイヤルティーとして本部に支払い、人件費などの店舗運営コストはオーナー負担の契約です。深刻な人手不足や人件費高騰の中、24時間営業を維持するためにオーナーたちは限界まで働かざるを得ません。私も兵庫県内のコンビニを経営していますが、週3日以上深夜勤務に入り、月の労働時間は350時間超え。精神的、肉体的、経済的に限界を感じます。営業時間は事情に応じて選べるようにすべきです。

 個人が巨大企業と運営条件の交渉を行うのは難しく、オーナー約100人でユニオンを作り、セブン-イレブンとファミリーマートの本部に団体交渉に応じるよう求めてきました。中央労働委員会は3月、オーナーは労働組合法上の労働者に当たらず、団交権は認められないとの判断を示しましたが、働く実態に合わず到底納得できない。5月にも訴訟を起こすつもりです。

 コンビニは今や、社会のインフラとしてなくてはならない存在。物販だけでなく、納税、公共サービス、災害時の対応などさまざまな役割を担っているが、対価はほとんどありません。社会貢献がきちんと評価される仕組みにしてほしいです。

 

省力化や無人化を進めて 九州経済調査協会主任研究員・松嶋慶祐さん

 スーパーでは出店が難しいような小さな商圏でも商売ができる点で、コンビニは流通業界にとって発明ともいえるビジネスモデルです。

 都心部の若者が多い地域では24時間営業を維持し、それ以外は夜間は閉めるなど地域の実情に合わせた線引きがされていくでしょう。店員は総菜を揚げたり、掃除をしたり、商品を陳列したりなど多様な業務を担っています。コンビニに限らず長時間営業を維持するなら、今後はITを活用した省力化や無人化に力を入れていくことが重要です。

 過疎が進む地域では唯一のコンビニが暮らしを支えている場合もあります。高齢者など「買い物弱者」にとっては1人分の総菜が買える貴重な場で、子どもの見守りの役割も果たしています。今後は地域コミュニティーの拠点としての可能性がますます広がっていくでしょう。

<Yahoo!ニュースの調査>「コンビニの24時間営業、どう思う?」

=2019/04/26付 西日本新聞朝刊=

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