中国、軍政タイに急接近 鉄道、港湾…応札相次ぐ 日本の第三国協力に限界

西日本新聞

中国企業が拡張計画への参加を狙うタイ屈指の貨物港、レムチャバン港 拡大

中国企業が拡張計画への参加を狙うタイ屈指の貨物港、レムチャバン港

「東部経済回廊」エリア

 【バンコク川合秀紀】軍事政権下のタイで、中国の存在感が急速に増している。軍政が民間資本を導入して推し進める鉄道や空港、港湾など基幹インフラの整備計画「東部経済回廊」(EEC)の入札に中国の大手企業が次々と参加し、23日にはその第1弾事業を落札したと発表された。経済圏構想「一帯一路」を広げたい中国と、経済成長の鈍化を中国の投資で挽回したいタイ。双方の思惑が絡み合い、結びつきはさらに強まりそうだ。

 首都バンコクの南東約130キロにあるタイ最大の貨物港レムチャバン港。現在、大規模な拡張計画の入札が最終段階を迎えており、二つの企業グループが競う。その両方に中国企業が名を連ねる。

 同港一帯への投資をPRする政府機関の担当者に取材すると、詳細は明かさなかったが「元々日本企業が多いエリアだが、最近は中国企業の問い合わせが多い。これからもっと進出が増えるだろう」と語った。

 同港からさらに約70キロ南には海軍が所管するウタパオ空港とサッタヒープ港がある。ともに軍民共用で、大規模な拡張と運営を民間企業が担う計画が進む。同空港の入札でも最終候補の企業グループに中国企業が加わる。中国が領有権を主張する南シナ海に近いタイ湾沿いに位置し、識者や外交筋が「目立たないが安全保障面で要注目のプロジェクトだ」と口をそろえる。

 いずれの事業もEECの一環だ。タイ政府は23日、第1弾としてウタパオ空港とバンコク近郊の二つの空港とを結ぶ鉄道事業を中国企業が参加するグループが落札したと発表した。プラユット暫定首相はこの結果を“手土産”に北京で開催中の一帯一路の国際会議に出席し「EECは東南アジア物流の中継地であり、中国にとっての入り口だ」と表明。EECと一帯一路を結びつけ、中国の投資を呼び込む姿勢を鮮明にした。

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 EECはデジタル分野の企業誘致も柱の一つ。その象徴が中国の巨大企業アリババだ。昨年、タイ政府とアリババは包括的な連携協定を締結し、大規模物流施設の建設や人材育成の支援などで合意した。総投資額は数百億円とされる。

 基幹インフラ整備に中国が軒並み関わることに懸念はないのか。計画の実務に携わるEEC事務局の中堅幹部は「各国の事例も調べ、中国政府が直接絡まないよう民間入札の仕組みにした」と意に介さない。だがスコータイタマティラート大のユッタポン准教授(政治学)は「中国は民間企業といっても政府の影響力が強い。これだけ中枢インフラを握られると事実上、中国の管理下に入ってしまう恐れがある」と懸念する。

 日本政府は昨年、中国と協力して第三国でインフラ開発などを進める方針を打ち出した。タイがその中心とされ、都市開発や物流分野での協業を探る。

 だが、在タイ外交筋は「中国にブレーキをかける意味でも日本が協調する意義は大きい」とする一方で「タイでは中国があからさまに安全保障にも絡む交通の要衝を狙っているため、その動きに協力することに海外企業は腰が引ける」

 いずれの計画地も都心から遠く、現在は閑散としている。入札途中で断念した日本企業もある。在タイ日本企業関係者の1人は冷めた目を向ける。「収益の見通しが立たず投資に踏み切れない日本と、長期的な戦略で一気に先行投資する中国。その差は大きい」

=2019/04/27付 西日本新聞朝刊=

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