【共有経済と連帯経済】 松田 美幸さん

西日本新聞

松田美幸(まつだ・みゆき)さん=福岡県福津市副市長 拡大

松田美幸(まつだ・みゆき)さん=福岡県福津市副市長

◆地域課題の解決に期待

 健康とは身体的、精神的、社会的に良好な状態であることと定義されている。高齢になって外出する手段がなくなると、社会とのつながりを失い、健康状態にも影響する。過疎地と言われる地域に限らず、超高齢社会の移動支援は住民からの要望も強く、多くの自治体の悩みだ。

 人口減少の影響で近所のスーパーや食料品店が閉店し、日常の生鮮食品の買い物もままならない高齢者が増えている。若い頃は気にならなかった坂道も、高齢になって買い物帰りに重い荷物を持って歩くのは辛(つら)い。

 地域の住民同士が支えあって、買い物支援や移動支援をする取り組みが各地で始まっているが、事業の運営やサービスを提供する担い手人材の確保、有償移送に関する法規制など、持続可能な取り組みにする上での課題も多い。

 民間の交通サービス供給側も労働力不足が深刻である。不採算路線バスに行政が補助金を出して維持したくても、そもそも運転する人材がいないと言われる。自治体が運営するコミュニティーバスも、民間事業者に委託されており、同様の課題を抱えている。バスやタクシー業界は、就業者の中高年男性層への依存から脱却できていないのだ。

 内閣官房が2016年から設置しているシェアリングエコノミー検討会議の第2次報告書と18年度版の事例集が最近まとめられた。地域の足の確保をテーマにした住民主体の取り組みが多数あり、移動支援に悩む自治体や住民にとって大いに参考になる。

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 シェアリングエコノミーとは、日本語で言えば「共有経済」。インターネット上の仕組みを介し、活用可能な資産を、個人間で貸借や売買、提供という形態で分かち合う、新しい経済の動きのことで、世界で急速に広がっている。

 活用可能な資産とは、一般的に、自宅や軒先といった空間、モノ、移動手段、お金、スキルの5分野に分類される。インターネットを介して自宅を誰かに貸す民泊サービスや、自動車配車ウェブサイトと配車アプリを介し所有する車を運転して他人を運ぶ移動サービスなどは、とても便利で、私も友人も海外旅行の際にはよく使う。

 国内では、官民が連携してシェアリングエコノミーの普及啓発に取り組む一方で、新たな法整備をしたり、既存業界の反発を受けて規制をかけたりするなど、アクセルとブレーキを同時に踏んでいる感は否めない。

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 「共有経済」の動きは、資産の「所有から活用へ」という流れだけでなく、個人が経済の主役になり、組織に縛られない働き方を可能にするという意味でも、社会に変革をもたらす点が注目されている。ただ、民泊や配車サービスなどの仕組みを提供する世界規模の大手企業だけが儲(もう)かっているのではないかという批判もあり、事業者がいかに社会課題や地域課題と向き合うかが問われるであろう。

 もうひとつの新しい経済の動きである「社会的連帯経済」は、その生い立ちからして地域の課題と向き合ってきた。人々のつながりや環境保全と持続性を重視する新しい経済システムで、ヨーロッパや中南米、カナダ、アジアなどで広がりを見せている。

 日本では聞き慣れない言葉だが、社会的連帯経済の担い手である生活協同組合やフェアトレードなどは、身近な存在だ。個人が会員や出資者となって、事業活動や利益配分の意思決定に関与できる仕組みで、地域内の経済循環を高める役割を担っている。

 地域の課題を住民の力で解決するには、小さくても経済が循環する仕組みが必要で、自治体としてもこうした動きに注目していきたい。

 【略歴】1958年、津市生まれ。三重大教育学部卒、米イリノイ大経営学修士(MBA)。2017年12月から現職。福岡県男女共同参画センター「あすばる」の前センター長。内閣府男女共同参画会議議員、内閣府少子化克服戦略会議委員。

=2019/04/29付 西日本新聞朝刊=

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