【日日是好日】新緑の空気に、ありがとう 羅漢寺住職 太田英華

西日本新聞

 山がもりもり元気になって来ました。久々に降った春の雨は優しく、穏やかな活力を与え、まぶしく輝いている新緑が、より一層すがすがしい空気を供給してくれます。「皆さん、どうぞこの空気を召し上がってください」。思わずこんな言葉が出てしまうぐらい、深呼吸すると体全体が浄化されます。私の一番好きな季節の到来です。

 6年前、旧参道は人が歩ける状態ではなく、仁王門からの参道も荒れ果てておりました。私は修行道場から帰山し申し訳ない気持ちになり、「絶対にここをよみがえらせる」と山の力を信じ、ひたすらにごみを拾い掃除をしました。

 最初は一人でした。そのうち賛同する仲間が増えると、山はみるみるよみがえってきました。3年がたち、これなら青山先生をお招きできると思い、当時83歳の先生を初めてお迎えしました。晋山前に、まずは羅漢寺をご覧いただきたいと思ったのです。

 私が修行道場を後にするとき、「あなたの晋山には、西堂として行かせてもらうよ」と先生はおっしゃいました。西堂とはその寺の住職の上の長老で、晋山式にどなたが西堂としてお越しになるかが重要になります。私は即答できずうつむくだけで、先生はけげんなお顔をされました。

 即答できない私は、大変失礼なことをしてしまったと思いましたが、そのときは先生を羅漢寺にお招きできるのか自信がありませんでした。私の頭の中では、荒廃した羅漢寺を立て直せるのか不安だったのです。

 帰山して山と向き合い3年。少しずつ山はよみがえって来たので、一度先生に羅漢寺をご覧いただかなければと思い、先生をお招きしました。初めて羅漢寺を訪れてくださった先生は「よくぞ、3年でここまでやりました。寺が生きています。唯々合掌するだけです」とおっしゃってくださいました。私は涙があふれ、「私のやっていることは間違っていなかったのだ」と確信しました。

 それから2年後の昨年、青山先生を西堂にお招きし晋山式を迎えました。6年前、荒れ果てていた旧参道は、今では素晴らしいこけむした参道になりました。仁王門からの参道も整備すると、様々な遺跡や文化の軌跡が顕わになり、まさしく山の中がよみがえってきました。今や、日本遺産「やばけい遊覧」の一翼を担っています。

 ただ自然と向き合うだけで、人間のやるべきことはおのずと見えてきます。時には自然と融合しなければならないこともあります。その時も、自然と向き合い、バランスを保てばよいのだと思います。欲をもって向き合うのでなければ、おのずと自然も人間を受け入れてくれるのではないでしょうか。自然は仏様です。

 改めて新緑の真新しい空気を目いっぱい吸い込むと、「今日も活力を有り難う」の言葉が出てきました。生かされていただいていることに感謝し、自然体で生きることの大切さを改めて感じました。

【略歴】1967年、羅漢寺27世住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在、羅漢寺28世住職として寺を守る。

=2019/04/28付 西日本新聞朝刊=

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