「上級国民」…

西日本新聞

 「上級国民」。感じの悪い言葉だ。東京・池袋で起きた事故以来、よく目にする。旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(87)の運転する車が暴走し、母親と3歳の女の子が亡くなった

▼2日後、神戸市でバスが横断歩道に突っ込み、2人が死亡。運転手は現行犯逮捕され、大野二巳雄容疑者と報道された。池袋の運転者は逮捕されず、当初は匿名、今も「元院長」の肩書が付く

▼二つの事故を比べ、元高級官僚で大企業の役員も務めた「上級国民」だから、警察やメディアは元院長を特別扱いしている、との批判が高まった。報道には、逮捕後は「容疑者」、逮捕前は敬称や肩書を付けるという明確なルールがあり、「特別扱い」は誤解だ

▼では警察の対応は。逮捕するのは(1)犯罪を疑うに足りる相当な理由がある(2)逃亡や証拠隠滅の恐れがある-場合でなければならない。高齢の上、負傷して入院中の元院長は(2)には該当しないとみて、任意で調べているようだ

▼「許せない」「不公平だ」と言いたくなる気持ちは分かる。だが、逮捕は懲罰ではなく、その可否も緊急逮捕以外は裁判所が判断する。そもそも取り調べは任意が原則。公権力による不当な拘束を防ぐためだ。それは憲法が定める「基本的人権の尊重」に基づく

▼きょうは憲法記念日。改めて条文に目を通してみたい。憲法には「法の下の平等、貴族の禁止」も。上級国民など存在してはならない。

=2019/05/03付 西日本新聞朝刊=

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