介護に赤ちゃん効果 唐津の施設、お年寄りの癒やしに

西日本新聞

 赤ちゃんとお年寄りが一緒に過ごし、ともに笑顔を育む介護事業所がある。佐賀県唐津市浜玉町の「看護小規模多機能むく」。赤ちゃんや子どもの「癒やし効果」を利用者の元気づくりやストレス軽減につなげようという全国でも珍しい試みだ。「むく」をモデルに、同様の取り組みを始める福祉施設も増えている。

 食堂に備え付けたベッドに赤ちゃんが寝そべる。90代の男性利用者がのぞき込み「桃太郎さん 桃太郎さん~」と歌いだすと、じっと見つめ返す赤ちゃん。周りのお年寄りからは笑い声が漏れた。施設代表の佐伯美智子さん(45)は「子どもにしか引き出せない笑顔がある」と言う。

 むくは2017年、通所や宿泊、訪問看護などのサービスを一体化した施設として開設された。佐伯さんは「高齢者が生き生きと暮らせる場所をつくりたい」と多世代が集う介護現場を目指し、子ども連れ出勤を推奨。女性スタッフが赤ちゃんを連れて働き始めた。

 地域からも「アイドル」を呼び込もうと、昨年から0~3歳の乳幼児と母親を有償ボランティアとして招く。現在は4組の母子が登録。週に1度施設を訪れ、約3時間、高齢者とともに食事したり遊んだりする。

 乳幼児は、ふらりと外出してしまった認知症の利用者のお迎えにも“同行”。スタッフが施設に戻るよう促しても応じない人が、子ども連れだと笑顔で受け入れることもある。認知症を研究する三重県立看護大の六角僚子教授(61)は「子どもと接すると表情が和らいだり、気持ちが落ち着いたりする」という。

 むくの活動に着目した佐賀県嬉野市の介護事業所「芽吹き」も今年2月から高齢者と乳幼児が一緒に過ごす時間を設けた。担当者は「赤ちゃんを見ると必ず笑顔になる」と実感。同じく2月に導入した仙台市の介護事業所は「赤ちゃんを抱っこしたがるなど雰囲気が明るくなり、利用者が怒らなくなった」と言う。

 母親が社会と関わるきっかけにもなっている。乳幼児を育てるボランティアの平方裕子さん(22)は「以前は家にこもることもあったけど、外に出ると新鮮な気持ちになる」。ボランティアで通っていた田嶋ひとみさん(32)は今年、スタッフとして働き始めた。「利用者の笑顔を見ると少しでも社会の役に立っているのかなと思える」と話す。

 施設は4月、地域とのつながりを深めるため敷地内に駄菓子店をオープン。高齢者が店員役を務め、地元の子どもたちが買いに来る。「介護が必要な人だけでなく、みんなに開かれた場所でありたい」。佐伯さんはそう願っている。


=2019/05/06付 西日本新聞朝刊=

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