司法改革20年 骨格が揺らいでいないか

西日本新聞

 司法と国民の距離はどこまで縮まったのか-。政府が1999年に内閣直属の司法制度改革審議会を設け、裁判の在り方などを抜本的に見直す作業に乗り出して、今年で20年になる。

 この間、裁判の迅速化や市民向け法律相談窓口の拡充などが進んだ半面、裁判員裁判への関心が低下し、法科大学院の低迷も顕著だ。目指した改革の骨格が揺らいでいないか。いま一度、制度全体を点検し、望ましい姿を考える取り組みが必要だ。

 裁判員裁判は2009年5月に導入され、今年2月までに約9万人が裁判員を務めた。その中で昨年の裁判員選任手続きの出席率は67%(09年は83%)、選任の辞退率も67%(同53%)と関心は年々低下している。

 審理期間が平均10日に及ぶことや、企業の人手不足、高齢化の進展も要因とみられる。

 しかし、市民の司法参加は重要だ。市民が裁判の仕組みを詳しく知り、良識を反映させることは誤判や冤罪(えんざい)の防止にもつながる。経験者には「人を裁く重みを知り、やって良かった」との声も多い。意義を広く伝え、国民の参加意欲を高めたい。

 制度の問題点としては「評議の内容が一切秘密とされ、市民感覚がどう生かされたのか検証できない」との指摘もある。改善の余地がないか考えたい。

 全国で半数が撤退した法科大学院を巡っては、政府が大学の法学部と併せて5年で課程を終える新コースを設置して志願者増を図る方針を打ち出した。これに対し、法学者からは「質の高い法曹を育成する理念に逆行し、急場しのぎにすぎない」と疑問視する声が出ている。

 法科大学院を経由せず法曹資格が得られる予備試験制度を見直す必要はないのか。司法試験合格者数は現状(約1500人)のままでいいのか。4万人を超えた弁護士の過当競争や大都市偏在の問題をどう解消するのか。そうした総合的な見地での検討がなされていないからだ。

 刑事事件を巡っては、長期の勾留を伴う「人質司法」「自白偏重捜査」がいまだに指摘されている。捜査の可視化を一段と進めることや、裁判所のチェック機能を強化するなど、さらなる取り組みが求められる。

 冒頭で触れた司法制度改革審議会は、21世紀の日本をにらんで新規立法で設置された。審議は足かけ3年で63回に及び、国内各地での公聴会や海外視察も行い、幅広い意見や視点を吸い上げて、多岐にわたる改革の必要性を提言した。

 制度の再考に当たっても、法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)の狭い枠にとどまらず、国民各層が参加できる開かれた議論の場を設けるべきだ。

=2019/05/08付 西日本新聞朝刊=