「自分狂ってるな」ゲーム依存、9年間で8回入退院…男性の苦悩

西日本新聞

作業療法の一環で将棋を指す健介。インターネット空間ではない生身の触れ合いが回復を助けるという 拡大

作業療法の一環で将棋を指す健介。インターネット空間ではない生身の触れ合いが回復を助けるという

【リアルはどこに ゲーム依存を考える】<1>

 20畳ほどの一室に10~40代の男女20人が集まり、誰からともなく口を開く。「スマホがないと不安で」「高校を辞めることにしました」…。ふてくされた表情の中学生や、体を前後に揺らし続ける男性もいる。

 福岡県久留米市にあるのぞえ総合心療病院の「集団療法室」。インターネット依存の低年齢化に危機感を抱き、2012年から集団療法を採り入れた。入院、通院の患者同士が語り合うことで、自分を見つめ直す心理療法の一つだ。

 入院患者の3分の1近くを占める未成年も、多くがゲームや会員制交流サイト(SNS)との付き合い方に問題を抱える。親にゲームを取り上げられ、包丁を振り回したり灯油をまいたりして連れてこられた子どももいる。

 数カ月間の入院でパソコンやスマートフォンから離れ、心身を休ませ、規則正しい生活を取り戻す。自分の考え方を振り返り、ネットとの付き合い方を考える。「家庭や学校、地域の機能が落ちていることが背景にある。安心できる居場所がゲームしかない状態だ。依存は一種のSOSではないか」と堀川公平院長(67)は話す。

 「自分が病気だという自覚はある?」。進行役の精神科医が、集団療法室で静かに耳を傾けていた健介(30)=仮名=に話を振った。健介は淡々と答えた。「自分の意思と関係なく行動してしまう。あっ、自分狂ってるな、と思います」

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 健介がオンラインゲームに没頭し始めたのは高校1年のとき。ネット上で出会った名前も知らない人とチームを組み、敵を銃で撃ち倒すゲームにはまった。

 〈助かった〉〈スーパープレー〉。仲間からチャットで褒められると、胸が弾んだ。画面の向こうに人がいる。独りぼっちじゃないと思えた。高校の誰にも言えなかった親の離婚を、ぽろっと打ち明けたのも、ゲーム仲間だった。一緒に暮らす看護師の母は、家を空けることが多くなっていた。

 夜は電灯を消し、午前3時まで熱中した。昼夜逆転で遅刻や欠席が増えた。高校は何とか卒業したが、その後は飲食店のアルバイトを辞め、ひたすらパソコンの前に座り続けた。1日1食のご飯がおいしいと感じられなくなった。母に話しかけられても無視。ゲームに負けると「こんちくしょう」と大声を出し壁に穴を開けた。

 日中は苦しかった。同級生が学んだり働いたりしている時間で、後ろめたさがあったのだろう。夜になると気持ちが落ち着いた。

 病院を訪れたのは20歳の時。病気という自覚はなかったが、困り果てた母に連れられた。3カ月の入院中は順調だったが、退院して1人暮らしを始めた途端、再発。主治医や母に「ゲームしてない」とうそをつき、インターネットカフェに入り浸った。家賃が払えなくなった。バイトも続かなかった。結局、9年間で8回入退院を繰り返した。 

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