酒どころ 泊まって満喫 鹿島市肥前浜宿 ゲストハウス2軒オープン はしご酒 白壁の町並みに甘い香り

西日本新聞

 六つも酒蔵があり、3月の「鹿島酒蔵ツーリズム」では日本酒ファンであふれる鹿島市。だが、ホテルが1軒しかなく、「お酒を飲んでも、なかなか泊まれない」という声が観光客から上がっていた。4月26日、白壁の町並みで知られる肥前浜宿に、古民家を改装したゲストハウスが2軒オープン。さっそく同僚を誘い、はしご酒を堪能し、ハウスに泊まってみた。

 大型連休終盤の4日午後3時すぎ、JR肥前浜駅近くの「ゲストハウスまる」にチェックイン。築87年の木造2階建てを改装した建物は、郷愁を誘うたたずまい。「お待ちしていました」。運営する肥前浜宿まちづくり公社のスタッフ、島崎雄輔さん(36)が出迎えてくれた。

 宿泊予約サイトとの契約が開業に間に合わなかったにもかかわらず、大型連休前半は口コミなどで最大10人の客が宿泊。干潟に漬かろうと3連泊した東京の人も。畳の個室もあるが、私たちはリーズナブルな相部屋のドミトリーを選んだ。寝るのは2段ベッド。「セミダブルでゆったりしてますよ」と島崎さん。

 温かい光を放つ電球の照明、古い家具を生かした調度類、寝心地にこだわった寝具…。デザイン全般を手掛けた前原幸恵さん(28)は「ポップさと落ち着きを調和させたかった。泊まること自体を楽しんでほしい」。外国人客にも共感を呼びそうな内装だ。

 ついスタッフと話し込んでしまい、気づけば午後4時半近くに。ほとんどの店が夕方には閉まってしまう肥前浜宿の通りに慌てて向かった。

 「鍋島」で有名な富久千代酒造は休みだったが、その傍らを通ると、ほんのりと甘い香りが漂う。峰松酒造場の肥前屋に滑り込んだ。約30種の日本酒や焼酎が試飲できる。「肥前浜宿」という銘柄の無ろ過酒などを味わう。大阪市から訪れた会社員西川隆仁さん(43)は「鹿島の酒はバリエーションが豊富でおもしろい」と満足そう。あふれるような酒の知識に耳を傾けているうちに閉店時間になった。

 鍋島の飲み比べができる「ハマシュク クラビト」へ。ここは午後6時まで。樹脂や焼き物による造形を手掛ける川崎泰史さん(35)の仕事場兼ギャラリーの奥に日本酒バーがあり、川崎さん自身が接客もこなす。肥前屋で出会った西川さんが「口当たりが良く、きれいな味」と評していた鍋島を4種堪能する。

 いったん、まるに戻り、カウンターで佐賀県の幻の米「天使の詩」と多良岳山系の伏流水で仕込んだという純米大吟醸「浜夢」をいただく。キリッとした飲み口、付け合わせのタマネギやショウガ、豆腐の漬けものが絶品だ。それもそのはず、まるの責任者である北御門裕一さん(36)は、すぐ近くの「漬蔵たぞう」で働いていた漬けもののプロ。「何がお酒に合うかは任せて」というだけある。

 もう一つのゲストハウス「あんど」は女性専用だが、1階の「そばダイニング龍庵」は誰でも利用でき、午後10時まで開いている。そばをさかなに、日本酒を味わうという通の楽しみにも挑戦した。福岡県筑紫野市の著名店などで修業した光武達也さん(47)が打った十割そばはのどごしよく、そばプリンは女性客に人気だった。

 まるとあんどを運営する公社スタッフの大半が移住者かUターン組。あんどを管理する女性も移住体験を経て、川崎市から鹿島市に居を移した。公社スタッフが肥前浜宿の町並みや鹿島の日本酒の魅力にほれ込み、伝えようとしているのがよく分かる。肥前浜宿の活性化に希望を感じた。

 午後10時の消灯に間に合うように龍庵を出て、まるに引き揚げた。ガーゼのキルトケットに包まれ、ぐっすりと眠り、目覚めた朝。500円のワンコインで食事を取る。具だくさんのみそ汁が体に染みた。

=2019/05/09付 西日本新聞朝刊=

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