水泳、無資格出場なぜ“横行”? 九州最高峰のジュニア大会 参加者の1割超 自己ベスト申告制裏目

西日本新聞

第39回九州カップ水泳競技大会の実施要項には、参加資格に「標準記録の突破」を明記していた 拡大

第39回九州カップ水泳競技大会の実施要項には、参加資格に「標準記録の突破」を明記していた

 「九州トップレベルの水泳大会に、参加資格の標準タイムを突破していないのに出場した選手がいる」。水泳競技関係者から、そんな情報が特命取材班に寄せられた。主催者が調べたところ、タイムを突破していないのは参加者の1割超に上った。どうしてそんな事態が起きたのか。

 情報を寄せた男性によると、大会は2月2、3日に福岡市で開かれた第39回九州カップ水泳競技大会。九州水泳連盟が主催し、ジュニア世代にとって九州最高峰とされる。参加資格は厳しく、2018年度の日本水泳連盟の公式・公認競技会で種目ごとに設定した標準タイムを突破すること。一人も出場できない水泳クラブも少なくない。

 男性は、大会本番で標準タイムよりも大幅に遅れている選手がいたことを疑問に感じ、水泳の公式記録をまとめたサイトを参照し、出場選手の個人記録を1人ずつ調べた。結果、1432人が3226種目にエントリーしているうち、少なくとも76人が参加資格を満たしていなかったという。

 「標準タイムを切れずに出場を断念し、悔しい思いをする選手もいる。これでは公平性が保てず、“出た者勝ち”ではないか」。男性は主催者に訴えた。

 大会を主管する福岡県水泳連盟に取材すると、「基準を満たさないエントリーがあったのは事実」と認めた。連盟の調査によると、男性の指摘を上回り、161人が計236種目で基準を満たしていなかった。参加者全体の1割を超える。

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 エントリーの仕組みを確認してみた。連盟によると、選手はスイミングクラブや学校などの所属団体を通じ、日本水泳連盟の会員専用サイトから出場を申し込む。同連盟の「公式大会」であれば、ベストタイムと取得日が自動的に表示され、標準タイムを満たさないとエントリーはできない。

 これに対し、地方で開かれる「公認大会」はベストタイムが表示されない仕様になっており、選手側は自己申告するのみ。今回の大会も公認大会で、福岡県水泳連盟も実際のベストタイムを確認していなかった。

 同連盟の坂井良明理事長は「申し込みの締め切りから大会当日まで期間は短い。全員の記録を手作業で確認するのは、物理的に難しい」と頭を抱える。

 選手のモラルも問われている。指導者はどう考えるのか。

 複数の選手が無資格エントリーしていた長崎県内の水泳クラブのコーチは「上位入賞すれば、全国大会も見えてくる。選手の次のステップにつながると思い、甘えてしまった」。福岡県内のクラブの現場責任者は「一生懸命に練習する子を見て、本番では標準タイムを切れそうだと期待してエントリーさせた」という。

 福岡県水泳連盟は男性の指摘や本紙取材を受け、5月25、26日に福岡市で開く公認大会では、所属団体に標準タイム突破記録の一覧表の提出を求め、無資格エントリーが見つかった場合は出場を取り消すことにした。今後、申し込み画面でベストタイムが自動表示されるように検討する。

 坂井理事長は「このままでは九州大会のレベルが維持できなくなる。100分の1秒単位で記録に挑む選手の気持ちを考え、不公平なエントリーをなくしたい」と語った。

=2019/05/09付 西日本新聞朝刊=

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