「保険料800万」実は4000万円 郵便局員不正営業に批判相次ぐ 持病伏せ加入促す 返金時に“口止め”か

西日本新聞

かんぽ生命保険が、保険料の全額返還に応じる代わりに、客に署名を求めた合意書。経緯を第三者に口外しないよう求める条項が盛り込まれている(写真の一部を加工しています) 拡大

かんぽ生命保険が、保険料の全額返還に応じる代わりに、客に署名を求めた合意書。経緯を第三者に口外しないよう求める条項が盛り込まれている(写真の一部を加工しています)

 「不十分な説明で、多額の保険に加入させられた」。全国の郵便局で不正な保険営業が相次いでいるとの西日本新聞の報道を受け、読者から勧誘方法や局側の対応への批判が多数寄せられた。保険営業を担当する現場では、局員自身や家族の名義で保険に加入する自腹営業も発覚。局員は「過重なノルマが背景にある」と証言した。

 福岡県の50代の女性会社員は2017年秋、80代の母親の保険契約に立ち会った。局員は、母親の貯金800万円について「保険に入ってお孫さん名義にすれば相続税対策になる」と提案。「いつでも解約できる」「貯金残高以上の支払いはない」と説明され、4件の保険に加入したという。

 しかし、約1年後に郵便局に確認すると、10年間で総額約4千万円の支払いが必要だと言われた。慌てて書類を見ると、その通り記載されていた。

 「契約時の説明と違う」と主張したが、局側は「きちんと説明した」の一点張り。解約したものの、支払った保険料のうち約120万円は返ってこなかった。女性は「80代の母が4千万円も払えるはずがない。きちんと確認しなかった私も悪いが、もっと丁寧に説明してほしい」と訴える。

 保険に加入できない持病がある客に「病気のことを申告する必要はない」と促す不正な勧誘も目立つ。

 熊本県荒尾市の男性会社員(52)は16年に保険に加入する際、申告書類に「健康診断で心電図の異常を指摘され、受診した病院では問題ないと診断を受けた」と記載。ところが、局員から「医師が問題ないと言っているなら、記載の必要はない」と説明され、書き直したという。

 翌年、男性は心臓の手術で入院。保険金を請求したが、販売元のかんぽ生命保険は「健康診断結果を正しく申告しなかった」と支払いを拒否。男性は「局員が申告しなくていいと言った」と抗議したが、結果は覆らなかった。「虚偽申告をしたように結論づけられ、納得できない」と憤る。

 返金に応じる代わりに、口外しないよう求められたケースもあった。

 山口県の女性(79)は昨年夏に保険に加入。局員からは「既に入っている保険を書き換えるだけなので、新たな保険料の支払いは必要ない」と説明を受けたという。実際には月約3万円の支払いが発生し、女性は抗議。かんぽ生命は全額返還に応じる意向を示したが、「本件に関する一切の事項を第三者に開示しない」との条項を盛り込んだ合意書への署名を求めた。女性は「口止めしようとしているのだろうか」と条項の削除を求めている。

 取材に対し、かんぽ生命は「守秘義務条項を盛り込むことは適切と考えており、社外弁護士の意見も踏まえて(合意書を)作成している」と書面で回答。不正な勧誘については「保険商品が客の意向と合致しているかを書面で確認し、署名してもらうなどしている。虚偽説明が確認された場合は処分を含め必要な措置を行っている」と説明した。

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重いノルマ病む人も

 「ノルマを達成するよう毎日厳しく言われ、電車に飛び込みたくなったことがある」。大阪府の局員は過重なノルマに苦しむ現場の実態を明らかにした。

 この局員によると、ノルマは外回りの営業職だけでなく、窓口担当者にも課せられる。達成できないと半ば強制的に研修に参加させられ厳しい指導を受けるという。九州の局員も「心を病んで退職する局員が増えている」と打ち明けた。

 愛知県の局員は「契約を取ると支給される手当を目当てに不正を繰り返す局員もいる」と指摘。一方、福岡都市圏の局員は「ここ2年ほどで不正は改善されてきている。多くの局員はきちんと仕事していることも知ってほしい」と訴えた。

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【ワードBOX】郵便局員による不正な保険勧誘

 日本郵便の内部資料によると、全国の郵便局では2015年度以降、局員の保険業法違反に当たる勧誘行為が73件発覚。内規に違反する不適正な勧誘も15~17年度に442件あった。保険勧誘に関する苦情は昨年までの約3年半で1万4千件超、うち約6割が高齢者に関する内容だった。同社は改善策として17年から、80歳以上の顧客と契約を結ぶ際、必ず家族にも保険内容を説明するルールを導入。本年度からは、80歳以上の新規客に対する勧誘を自粛している。

=2019/05/10付 西日本新聞朝刊=

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