中3男子「俺ってやり過ぎ?」 eスポーツ、依存対策の現状は 業界「親世代への周知は簡単ではない」

西日本新聞

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ゲームへの依存度が分かるセルフチェック項目

3日間で約2500人が熱中したeスポーツの世界大会=2月中旬、福岡市博多区

【リアルはどこに ゲーム依存を考える】<3>

 福岡市博多区の福岡国際センターに2月、きらびやかな光と音が交錯した。

 「あーっ、ぎりぎりの綱渡り」「圧倒的なKO!」。解説者の声が響き渡る。特設ステージで繰り広げられる“闘い”に観客席からもどよめきが起きた。

 コンピューターゲームで勝敗を競うeスポーツの世界大会「EVO Japan 2019」だ。2人がそれぞれモニター画面に向かい、コントローラーを駆使して格闘ゲームを勝ち抜く。6部門合わせた賞金総額は1千万円。ゲーム強豪国の韓国やネパールからの出場者も含め、3日間で約2500人が熱中した。

 ある部門で優勝したのは千葉県のサミットさん(32)。本名ではなくプレーヤー名での参加だ。賞金50万円を手にし「全ての力を爆発させた」と喜んだ。

 千葉県内の市役所で働く公務員。福岡市の大学を出た後、東京のeスポーツチームに所属し、週2回、3時間ほどプレーする。仲間は全員、ゲーム以外の職に就く“兼業”。短い時間で集中し、技の出し方を練習し、苦手なキャラクターに勝つための方法を考える。

 サミットさんは「上を目指して努力してきた」と胸を張る。一方、「eスポーツ選手は経済的に不安定で引退後の未来も見えない。普段の生活と両立しながらゲームを楽しむのが一番いいと思う」とも語った。
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 パソコンやスマートフォン、家庭用ゲーム機の普及とともに、ゲームの愛好者は増えている。eスポーツという名称も広まり、一気に市民権を得た。ただ、サミットさんのように日常生活とのバランスが取れる人がいる一方で、依存に近い状態の人もいる。

 記者は大会期間中、会場から出てきた出場者や観客計10人に声を掛け、ゲーム依存度が分かるセルフチェック=イラスト=を受けてもらった。すると3人が、ネット依存に詳しい国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長が「依存が始まっている」と判断する状態に当てはまった。

 中国地方に住むゲーム友達と一緒に関西地方から訪れたという中学3年の男子生徒(15)は「1日10時間ぐらいやってる」と明かした。今までに時間を減らそうとしたことはないという。「俺って、やり過ぎ?」と首をかしげた。

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 ゲームを世に送り出している人たちは、依存の問題をどう捉えているのか。メーカーなど約180社でつくる業界団体、コンピュータエンターテインメント協会の山地康之事務局長(47)は「子どものゲームの使い方に注意を払うよう、保護者に広く呼び掛けている」と説明する。

 同協会は「未成年の保護についてのガイドライン」を定め、中学生は1カ月数千円など、各社が年齢に応じた利用上限額をスマホゲームに設定している。多くのゲーム機やスマホには、親があらかじめ設定すれば、使用時間や課金を制限できるペアレンタルコントロール機能が付いている。

 ただ、こうした機能を使いこなせる親は多くない。ゲームによっては、子どもが年齢を偽って設定すれば無制限に使えるなど、抜け道がある。「親世代への周知は簡単ではない」と山地事務局長は話す。

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 ネット大国の韓国では、2002年、86時間連続でゲームをし続けた24歳男性が急死。その後もやり過ぎによる血栓症での急死や、親に取り上げられたことによる自殺や殺人が相次ぎ、政府は対策に乗り出した。

 専門相談機関を設置し、依存の子どもを対象に、ゲームやネットが一切ない環境で生活を整える合宿形式の治療を実施。さらに11年から、16歳未満は午前0~6時にゲームができない「シャットダウン制」を採っている。

 かたや日本。eスポーツの世界市場規模は17年の約700億円から21年には約1765億円へと急成長が見込まれる(総務省)。流れに乗り遅れまいと、経済産業省や自治体はゲーム産業育成を旗振りし、大会を誘致。さまざまな企業がスポンサーに名乗りを上げる。一方で依存症の対策は事実上、ゲーム業界の自主的な取り組みと「家庭努力」に委ねられている。

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=2019/05/10付 西日本新聞朝刊=

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