遺族「いじめから命守れぬ」 法改正案“骨抜き”危惧 現場に配慮か「教員の懲戒規定」削除

西日本新聞

記者会見で座長試案への反対意見を述べる遺族ら=4月22日、東京都内 拡大

記者会見で座長試案への反対意見を述べる遺族ら=4月22日、東京都内

 いじめ防止対策推進法の改正に向けた超党派国会議員勉強会(座長・馳浩元文部科学相)の議論に、いじめ自殺で子どもを失った遺族らの批判が噴出している。勉強会が昨年秋にまとめた「たたき台」にはいじめを放置した教員の懲戒規定などが盛り込まれたが、4月に示された「座長試案」は学校現場に配慮し、多くの項目が削除されたからだ。「誰を守る法律なのか」。骨抜きの改正案になりかねない事態に、遺族らは危機感を強める。

 「座長試案では学校を変えることはできず、子どもの命は守れない」「当初の案は希望を見いだす内容だったのに」…。4月22日、東京都内で記者会見した遺族らは次々に憤りと失望を口にした。いじめ問題の解決に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」の小森美登里理事は「命を救うための法律にしてほしい」と涙ながらに訴えた。

 今国会への改正案提出を目指す勉強会は昨年11月、遺族らへの意見聴取をした上でたたき台を作成した。各学校がいじめ防止基本計画を策定▽各学校にいじめ対策委員会を設置▽いじめを放置したり隠したりした教員の懲戒規定の新設-などを盛り込み、学校側の責務を明確にした。

 しかし、4月10日に示された座長試案はこれらのほとんどが削除され、「骨抜き」に。学校関係者への意見聴取で「業務が増加する」などの懸念が相次ぎ、教員の働き方や自主性などに配慮したためとされる。

 2006年、福岡県筑前町でのいじめ自殺で長男を亡くした森美加さんは、真相解明に当たる第三者委員会の人選を「利害関係のない人を2人以上入れる」とする座長試案に強い違和感を覚える。そもそも利害関係者の委員入りを禁じる現行法より後退するからだ。「ますます機能不全の第三者委になる危険性がある」と憤る。

 4月19日には、11年に大津市で自殺した中2男子の父親が記者会見し「子どもの命より大人の都合を優先する内容だ」と座長試案を批判し、遺族ら43組の連名で、たたき台の内容での法改正を求める意見書を勉強会に提出。5月9日には、いじめ被害者の女子高校生(17)やいじめ防止に取り組む団体が記者会見して「座長試案ではいじめ予防にならない」と訴えた。

 「尾木ママ」こと教育評論家の尾木直樹さんは「(座長試案なら)改正しないほうがまし。学校現場で一番大切なのは子どもの命と安心安全で、それを後ろに追いやってはいけない」と指摘する。

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いじめ防止対策推進法

 2011年の大津市の中2男子いじめ自殺をきっかけに議員立法で成立、13年に施行された。いじめを「児童・生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義し、防止策や実態調査などを学校、自治体、国の責務と明記。施行後3年をめどに必要な措置を講じるとされているが、これまで見直しはされていない。

=2019/05/11付 西日本新聞朝刊=