保育士支援、企業主導型なぜ対象外? 奨学金返済 「認可」優先、自治体で差 「地域の子ども預かってるのに」

西日本新聞

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 福岡市は4月から、民間保育所で働く正規雇用の保育士を対象に、奨学金返済を支援する制度を始めた。好待遇で保育士を確保し待機児童解消につなげる狙いだが、特命取材班にはある保育士から「企業主導型保育所の勤務者が対象外なのは納得できない」との声が届いた。企業主導型も地域の子どもを受け入れている点で民間保育所と変わりない。調べると、自治体によって対応に差があった。

 市によると、大卒が月1万5千円、短大・専門学校卒が月1万円を上限に、最大総額180万円程度を助成。既に就職して返済を始めた人でも、返済期間の半分以上が残っている人は対象となる。7月ごろから支給を開始する予定という。

 取材班にメールを寄せたのは保育士になって4年目という女性(25)。昨年4月から福岡市の企業主導型保育所に勤めている。大学時代の奨学金の返済が半分以上残っており、助成制度を利用しようと市に問い合わせたところ、企業主導型を含む認可外保育所の保育士は対象外だと告げられたという。女性は「厳しい監査をクリアできる保育水準を保っている。にもかかわらず、助成が受けられないなんて不公平だ」と話す。

 運営側も戸惑う。福岡市中央区の企業主導型保育所「いふくまち保育園」の酒井咲帆園長(38)は「待遇の差が大きくなりすぎると保育士の確保がこれまで以上に大変になる。枠を設けて地域の子どもも預かっているのに…」とこぼす。

 なぜ対象外なのか。福岡市の担当者は「やはり保育の中心は認可保育所。まずはそちらの保育士の確保を優先したい」と説明する。

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 他の自治体はどうか。

 最大54万円を助成する北九州市、同じく36万円を助成する名古屋市は、福岡市と同様、企業主導型は対象外だ。「企業主導型はあくまで内閣府の事業。市は設置・運営に関与していないので助成はできない」(名古屋市の担当者)という。

 一方、4月から最大36万円の助成制度を始める岡山市は、企業主導型保育所の保育士も対象とする方針。市の担当者は「企業主導型も市の待機児童対策に役立っているし、内閣府が設定した基準も満たしている」。家賃の一部助成制度も設け、同様に企業主導型も対象とする予定だという。

 秋田市(最大100万円助成)と盛岡市(同25万2千円助成)も、企業主導型を対象に入れている。盛岡市の担当者は「市から企業に保育所の設置を呼び掛けたので、助成の対象からは外せない」と話した。

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 単純に比較できない面もある。

 企業主導型に対する助成金支給や審査を担う公益財団法人・児童育成協会によると、企業主導型保育所の設置助成決定数は昨年3月末時点で岡山市28施設▽秋田市7施設▽盛岡市5施設。対して福岡市は101施設。支援対象に含めると市の財政負担の拡大幅は大きい。それだけ働く保育士も多いため、不公平感も募ることになる。

 保育政策に詳しい日本総研の池本美香・主任研究員は「自治体の財源には限りがあり、全ての保育士を手厚く補助するのは不可能。長時間労働の是正を働き掛けるなど、金銭面以外の保育現場の魅力向上も大切なのでは」と話している。

=2019/05/11付 西日本新聞朝刊=

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