【DCの街角から】失業率は下がっているが…

西日本新聞

「HIRING(求む)!」と求人の張り紙を掲示している店舗=5日、バージニア州アーリントン 拡大

「HIRING(求む)!」と求人の張り紙を掲示している店舗=5日、バージニア州アーリントン

 バージニア州にある自宅近くの飲食店や衣料品店で最近「従業員募集」の張り紙をよく見掛ける。米政府の発表によると、4月の失業率は3・6%という49年ぶりの低水準を記録し、求人件数も平均時給も上がっている。労働者にとって「売り手市場」の今、人手不足に直面する店や会社が多いのだろう。

 実は私も少々困っている。大学院を修了したものの希望の働き口が見つからず、アルバイトをしながら時々、記事に必要な資料集めを手伝ってくれる若者がいたのだが、ついに就職が決まったのだ。「忙しくなっても手伝いは続ける」と言ってくれたが、春先からメールを送ってもなかなか返信が来なくなり、事実上、仕事を頼めなくなった。彼女が就職できたことはもちろんうれしいのだが、後任のめどは全く立っていない。

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 指標上は好調な米国経済。では、国民の暮らし向きは実際に良くなっているのだろうか。

 レストランで知人と夕食を取った時のこと。支払いを済ませて店を出ると、テーブルを担当した若い店員が血相を変えて追い掛けてきた。「うちは(料金の)18%以上のチップをもらうことになっているんです」

 チップが店員の給料を補っていることは分かっているが、米国の接客が日本に比べてきめ細かくないのが一般的、という事情を差し引いても、この店員は愛想がなく、つっけんどんだった。サービスに不満だという抗議の意思を込めて、あえて10%にしたのだ。

 そう反論しようとしたのだが、切羽詰まったような店員の形相に「このチップがもらえなかったら生活に困るほど苦しいんだろうか」との思いがよぎり、結局、要求に従うことにした。

 先日、これから就職活動をするという大学生と話をする機会があったが「失業率が下がっているといっても、やりたい仕事が見つかるとは限らない。それまではたぶん二つくらいアルバイトのような仕事をすると思う」と不安を漏らしていた。8日にはワシントンなど都市部で、通常のタクシーに代わって急成長し、すでに市民生活に溶け込んでいるスマートフォンを使った配車サービスの運転手らが賃上げを求めてストを起こした。

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 ワシントンでの記者生活も3度目の春を迎えた。この間、株価などは確かに上向き、好調な経済が続いていることは専門家に言わせれば疑いのない事実だ。とはいえ、トランプ大統領がいくら「米経済は史上最高だ」と自画自賛しても、日々の生活に汲々(きゅうきゅう)とする人たちが大きく減っている実感はない。

 支局近くの街角では今年も暖かくなるに連れ、ホームレスの姿が増えてきている。 (田中伸幸)

=2019/05/11付 西日本新聞夕刊=

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