経団連の電力提言 説得力欠く原発利用拡大

西日本新聞

 経団連が電力システムの再構築を求める提言を公表した。

 日本の電力システムは、化石燃料依存度の高止まり、再生可能エネルギー活用のための送電線網不足、原子力発電所の再稼働問題、国際的に割高な電力料金-の「四つの危機」に直面しているとして、発電や送配電の分野に投資を呼び込む環境整備が必要だと訴えている。

 国民生活や経済活動の基盤であるエネルギー問題に関する包括的な提言は、昨年5月に中西宏明氏が会長に就任して以来、初めてだ。

 主力電源化が期待される再エネに関する内容には異論はない。固定価格買い取り制度(FIT)で増大した国民負担を抑制するために、抜本的な制度見直しの検討を急ぐべきだ。太陽光や風力など出力変動が大きい再エネを一段と活用できるよう、蓄電・蓄エネルギー技術の開発も重要である。

 一方、原発の利用拡大を求める部分については、首をかしげる点が多い。

 東日本大震災後、原発は新規制基準を満たさず稼働停止が長引いているのに、この停止期間を新規制基準で定められた最大60年の運転期間から除くべきだと主張し、60年を超えたさらなる運転期間延長に向けて技術的検討を求めたことなどだ。投資を回収するビジネスの視点が色濃く、原発に対する厳しい世論を踏まえた内容とは思えない。

 現在の電力システム危機は、東京電力福島第1原発事故に起因しているという事実から、目をそらしているのではないか。

 中西氏は原発メーカーの日立製作所会長でもあり、原発の再稼働や新増設について積極姿勢を示してきた。記者会見などでも、原発を含むエネルギー問題について、幅広い国民的な議論が必要だと発言してきた。

 今回の提言にも、将来の電力システムについて国民的な議論が期待されるとの記述がある。ならば、経団連がリードして、それを実践してはどうか。

 中西氏の発言や経団連の提言を受け、市民団体から公開討論を求める声が上がっている。小泉純一郎元首相が顧問を務める団体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」の要請に対し、中西氏は「エモーショナル(感情的)に反対する人たちと議論しても意味がない」と応じていない。意見が割れている問題だからこそ、異なる意見を持つ人との議論に意義がある。

 8年前の原発事故がなかったかのように原発回帰を求めても説得力はない。次世代のエネルギー源の望ましい姿をどう描くか。原発の必要性を疑わないのなら、経済界のリーダーとして議論の先頭に立ってほしい。

=2019/05/12付 西日本新聞朝刊=