ブラックホールは宇宙を語る 山岡均氏

西日本新聞

国立天文台天文情報センター広報室長・准教授山岡均氏 拡大

国立天文台天文情報センター広報室長・准教授山岡均氏

◆史上初の撮影

 4月10日、世界6カ所同時の記者会見で、人類史上初となるブラックホールを直接撮影した画像が公開された。時差のためアメリカでは朝、ヨーロッパで昼、そしてアジアでは夜の時間帯に会見が設定された。日本では午後10時からという遅い時間にもかかわらず、100人近い報道陣が殺到し、司会を務めた私にとっても感慨深い会見となった。

 翌日の朝刊は1面でこの成果を伝え、研究チームはさまざまな媒体で紹介された。ブラックホールフィーバーは今も冷めやらない。

 画像に写る明るいリングは、ブラックホールの周囲で曲げられて集まった光で、真ん中に黒くブラックホールによる影が見える。これまで周囲のガスや星の動きから存在が推定されていたブラックホールの姿を映し出したこの画像は、まさに「百聞は一見にしかず」を体現するものだ。

 この画像は、世界各地に点在する電波望遠鏡で同時に同じ天体を観測し、データを持ち寄って画像を合成する「超長基線電波干渉法」という手法で撮影された。イベント・ホライズン・テレスコープと名付けられた国際共同研究は、まさにブラックホールの特徴である「事象の地平面」を見るためのプロジェクトだ。

 このようなプロジェクトであるから、全世界の研究者が結束して事に当たらなければ実現しない。200人を超える研究グループのメンバーは、さまざまな国のたくさんの機関に所属している。すべてのメンバーがこの画像を構築するのに欠かせない貢献をそれぞれに果たした。「誰が」「どの機関が」「どの国が」ではなく、全世界でひとつの偉業を達成したと捉えたい。

 ブラックホールを知って何の役に立つのか、という質問が記者会見でも提起された。確かに今日明日の生活に直接役立つものではない。しかし、このような研究によって私たちの住む世界の理解を進めることは、宇宙について知り、重要性を確認する機会となろう。世界観を新たにするこの成果を、全世界で共有できたことは幸せである。

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 山岡 均(やまおか・ひとし)国立天文台 天文情報センター広報室長・准教授 1965年生まれ、松山市出身。博士(理学)。九州大大学院理学研究院助教などを経て現職。専門は天体物理学と天文教育で、講演や一般書執筆も幅広く行っている。

=2019/05/12付 西日本新聞朝刊=

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